香港人作家たちが作る超絶技巧の模型作品「香港ミニチュア展」

伝統的な低層建築を再現したミニチュア作品(写真提供:香港政府観光局)

 東京・丸の内にある商業施設「KITTE」の1Fアトリウムで9月29日から「香港ミニチュア展」が始まった。

「うわ~、こんなにちっちゃいの、よく作れたね」

「よく出来ている~」

「香港行きた~い!」

 展示会初日、オープンの午前11時になると、「KITTE」の1階には大勢の人が押し寄せた。たまたま「KITTE」にやってきた人もいるようだが、わざわざ初日を目指してやってきた香港ファンやミニチュア模型ファンが多いようだ。

 出品されているミニチュア模型作品は全部で48点(日本未発表の作品14点を含む)。すべて香港人のミニチュア模型作家たちによる手作りだ。全作家17人中、14人が来日し、自ら作品を展示した。作品は香港の町に行けば、どこにでもあるような風景や、昔懐かしい風景、商店、建物、伝統行事などを精巧に再現しているが、見ているとなぜか、懐かしい気持ちになってきて、ミニチュアの世界に引き込まれる。

西湾の海沿いに立つ「唐楼」を再現(写真提供:香港政府観光局)
西湾の海沿いに立つ「唐楼」を再現(写真提供:香港政府観光局)

 たとえば、中国式の低層建築を描いた作品「唐楼」は「これぞ香港」という代表的な街並みだ。「唐楼」は近代初期に中国南部でよく見られた様式の建築物で、1階が商店、2階から4階までが住宅になっている。

 90年代に完全に取り壊された九龍城にあった庶民の店を再現した作品「城塞光影 九龍城にあった庶民の店」を制作したイアン・チョイ氏は「私は実際に九龍城を見る機会はなかったが、当時の資料を参考にして再現した。その中にある庶民の店は50~70年代に『士多』と呼ばれ、調味料や飲み物、オモチャまで何でも売っていた。これは80年代の『士多』。香港のユニークな文化のシンボルとして、作品に残しておきたい」と話す。

 そのほか、長寿を祝う「寿宴」ではたくさんの広東料理がテーブルに並ぶ。香港のお祝いの席といえば、子豚の丸焼きやガチョウの煮込みなど伝統的な広東料理のごちそうだ。

作品「寿宴」。長寿を祝う宴(筆者撮影)
作品「寿宴」。長寿を祝う宴(筆者撮影)

「金藝茶坊 伝統的なお茶を楽しむ店」(写真3)は香港スタイルのお茶屋さん。水仙の花や金柑の木などが置かれているところを見ると、季節は春節(旧正月)のころをイメージしているのかもしれない。「我愛香港街 わが街、香港」を制作したチャン・ホン・ファイ氏が「せわしなく行き交う人々、道にせり出した看板、二階建てバスやトラム。76分の1のスケールでこの作品を作った。愛する街、香港のユニークで活気あふれる情景を表現している」と語ってくれた。

作品「金藝茶坊」(筆者撮影)
作品「金藝茶坊」(筆者撮影)

作品に共通するのは「香港愛」

 ミニチュア作品に使う材料はいずれも樹脂粘土、プラスチック板、木材、ビーズ、針金、セロハン紙、手芸用の芯、絵具などで、ハサミやピンセット、定規、ペン先などを使って小さなパーツを作り、それをボンドや接着剤などで貼りつけて立体化していく。既製品の籠や部品などを使う場合もあるが、ペットボトルのフタや、不要になった雑貨など「普通なら捨ててしまうようなささいなもの」も使用する。制作期間は作家や作品によってもちろん異なるが、大きなものでは3~4か月、小さなものでは1か月程度かかるという。作家たちは趣味でこれらの作品を作り、香港でも展示会を行ってきた。

 すべての作品に共通するのは、その超絶技巧の精密さや芸術性、オタク魂だ。そして、伝わってくるのは彼らの「香港愛」や「郷愁」だ。

指先より小さな模型(写真提供:香港政府観光局)
指先より小さな模型(写真提供:香港政府観光局)

 作品の中にはすでに香港から消えてなくなってしまったもの。たとえば、昔ながらのオモチャ屋さんや、第二次大戦後、内戦に敗れた国民党員が家族とともに避難してきてできた摩星嶺木屋区、70年代の公営住宅、革靴職人の生活などがある。作家の中心年齢は30~50代。今回の展示会は香港返還から20年の記念イベントのひとつだが、今の香港をミニチュア作品として残す反面、ノスタルジーや古きよき時代への「思い」も感じる。今の香港と昔の香港。ミニチュア作品を通して、見比べてみるのもおもしろいかもしれない。

 同ミニチュア展は10月9日(月・祝日)まで。入場無料、午前11時~午後9時まで。撮影も自由。