「お花見よりもなぜか巨木や老木に興味津々!?」ある中国人家族の日本珍道中

樹齢数百年という巨木が日本には案外多い(ペイレスイメージズ/アフロ)

「ねぇ、どうして日本にはこんなに太い木がたくさんあるのかしらねぇ?」

56歳の母親が娘にたずねる。あまりに素朴で意外な質問に娘はびっくり。「日本のことは何でも知っている」と思っていた日本通の娘は絶句。「お母さん、おもしろいところに目をつけるね~」といいながら苦笑するだけだった。

これは、日本を旅行中のある中国人家族が交わした実際の会話だ。3月後半の3連休を挟み、東京で働く20代後半の娘を訪ねてやってきた両親は、東京都内観光と伊豆の温泉への小旅行を楽しんだ。両親は初来日。これまで日本のことはあまり好きではなく、日本旅行をした経験もなかったが、日本で就職して1年が経とうとしている娘が、親孝行旅を思いつき、ようやく実現したのだ。

定番の浅草や銀座、東京スカイツリー、皇居、二重橋などを一緒に回るほか、娘の勤務先の本社や支店にも連れていった。東京でも屈指の一流企業に勤務する娘の様子に両親は満足げ。中国人らしくせっかちなので「有名なレストランの行列に並ぶのはパス(笑)。食事は何でもいいから、と軽いもので済ませ、とにかく精力的に東京近郊をたくさん歩き回ったんです。1日2万歩以上歩いた日もあったんですよ」(娘)というからすごい。

しかし、娘がいちばんびっくりしたのは両親があるものに示した“興味”だ。明治神宮や新宿御苑、鎌倉の鶴岡八幡宮などを訪れた際に見た老木、巨木にいちいち目を留めて感心していたのだ。

「北京にはこんなに太い木はないわよ、ねえ、お父さん、やっぱりこんなにすごい木、見たことないわ」(母親)

「そうだね~、それに幹の中がえぐりとられたような奇妙な形や、まるで生きているみたいに曲がりくねっていたり……。それにあんなに大きな木は数百年は経っているね」(父親)

「とくにあれ、皇居前広場の剪定された松の木の形はすばらしいわよ」(母親)

「そうそう。それに………」(父親)

両親の興味はどこに行っても“巨木”に向いた。さらに、感心していたのは日本の美しい自然だ。日本の自然が美しいというのは、これまでも多くの中国人旅行者が口を揃えていっていること。とくに不思議なことではないが、娘自身、大学院時代から数年間、日本に住んでいて気づかなかった「日本のすばらしさ」を初対日の両親から教えられたようで、とても新鮮でうれしかったという。私は娘に「それなら、今度は屋久島に連れていってあげたら?屋久島には樹齢数千年というすばらしい木がたくさんある。ご両親もきっと喜ぶわ」と教えてあげた。

もう一組、最近中国からやってきた親子3人連れも、偶然だが、日本の木に興味津々だった。

その親子は40代の両親の小学生の子ども。父親は毎日微信(中国版ツイッター)に日本旅行の様子を投稿していたが、その中には盆栽や老木に関するものが多かったのだ。

建長寺の名木
建長寺の名木

中でもとくに興味を示していたのは鎌倉の名刹、建長寺の柏槇(びゃくしん)という古木。中国から持ち込まれた種子を寺にまいたもので、樹齢は700年以上だ。神奈川県の名木百選にも選ばれており、観光の目玉になっているが、この父親は「中国から持ち込まれた種子がこんなに大きく育つなんて……。感激で涙が出そうです。きちんと保存され、大事にされてきたからこそ、これだけ立派になったのでしょう。さすが日本です」とうれしそうだ。また、この父親は植木市などに出かけ、日本ならではの盆栽の数々にも感心していた。

中国から持ち込まれた種子が育ったといわれている
中国から持ち込まれた種子が育ったといわれている

中国人の観光がモノからコトへと移行していることは、これまで幾度となく報道されてきたが、まさか老木、巨木にも深い興味を示すとは……。

中国にももちろん大きな木はたくさんある。だが、公園内で、寺社で、囲いをしたり、看板を立てたりして大事に保存されていることはあまりない。日本のインバウンドには、まだまだ日本人がまったく気づかない、未知の観光資源が眠っているといえそうだ。