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クラーク記念国際が初優勝! 『第14回 全国高等学校女子硬式野球ユース大会』

中川路里香フリーランスライター
初の全国制覇を喜ぶクラーク記念国際の選手たち

 8月21日から愛知県と岐阜県を会場として開催していた『第14回 全国高等学校女子硬式野球ユース大会』の決勝が28日にナゴヤ球場(愛知県名古屋市)で行われ、クラーク記念国際が、福井工大福井を4対1で破り、初優勝を遂げた。ユース大会は、高校女子硬式野球3大大会の一つで、3年生引退後の新チームで戦う最初の公式戦。今大会は史上最多の52チームが参加していた。

 クラーク記念国際は、10回大会(2019年)では福井工大福井に敗れ準優勝だったが、今回はその時の雪辱を果たした。同校の全国制覇は、3大大会を通して初めて。

クラーク記念国際 100 000 03 4

福井工大福井    100 000 00 1

【バッテリー】 

クラーク記念 柴田-海野

福井工大福井 藤田、奥村-佐藤

 決勝にふさわしい好試合となった。クラーク記念国際・柴田栞奈さん(2年)と福井工大福井・藤田奈那さん(2年)との両エースの投げ合いは、初回の1失点以外は無失点の投手戦に。  

 均衡を破ったのはクラーク記念国際。延長8回、先頭打者、9番・笠森咲希さん(1年)が二塁の頭を越える安打、1番で主将の内田梨絵瑠さん(2年)の右前安打から一死二、三塁としたところで、3番・千葉優希和さん(1年)が三遊間を抜く2点適時打を放つなどたたみかけ3点を勝ち越し、試合を決めた。

延長8回、3番・千葉優希和さんの適時打で2者が帰り喜ぶクラーク記念国際ナイン
延長8回、3番・千葉優希和さんの適時打で2者が帰り喜ぶクラーク記念国際ナイン

三冠を目指す権利を獲得

 内田さんは前日の準決勝では3番・投手で出場し2安打1打点、完投と大活躍。決勝では初打席に藤田さんの初球を迷わず振り抜き中前安打したのを皮切りに3安打、2度目の出塁時には二盗を決めるなど、チームを鼓舞するプレーが際立った。福井工大福井とは、今夏の選手権大会準々決勝でも対戦。その時も藤田さんから安打を放ったが、試合には敗れていただけに今回の安打に喜びもひとしお。

 試合後「日本一をとるためにクラークに入りました。目標が達成できて嬉しい」と話し、「三冠を目指せるのは私たちだけ。当然、狙います」と笑顔で三冠達成を誓った。

大会通じて打率5割越えと打撃好調だったクラーク記念国際・内田梨絵瑠さん。主将として率先してチームに元気づけるしぐさが多く見られた。制球力ある投手としての顔も持つ多彩な選手だ。
大会通じて打率5割越えと打撃好調だったクラーク記念国際・内田梨絵瑠さん。主将として率先してチームに元気づけるしぐさが多く見られた。制球力ある投手としての顔も持つ多彩な選手だ。

内田さんへの初球が甘く入った

 準々決勝から3連投した頼れるエース藤田さん。選手権以降、調子が上がらず、不安の中で大会に入ったというが、持ち味である緩急のある投球術でチームを決勝戦まで導いた。その決勝戦ではテンポ良く投げられ、大会中、一番良いできだったと振り返ったが、初回の内田さんとの対決については「まともに勝負してしまった」と悔やんだ。「試合の第一球目はストライクが欲しいのですが、怖がらずにもっとコーナーをつくべきでした。好打者と意識し過ぎて甘く入ってしまいました」と反省していた。

選手権大会に続き、力投した福井工大福井エースの藤田奈那投手
選手権大会に続き、力投した福井工大福井エースの藤田奈那投手

内角にどんどん攻める投手に変化

 福井工大福井の4番・高宮凛さん(2年)は、同点に追いつく適時打を放ち、好試合を演出した。柴田投手について「選手権大会のときとは違って、インコースにズバズバ投げ込んできた」と思うように打たせてもらえなかったと話す。「苦手なインコースでも打ち切れるように打撃力を磨きたい」とリベンジを誓った。

「先制点を取った時点でイケると思った」 クラーク記念国際・広橋公寿監督

 試合前から「初回に先制すれば、自分たちの野球ができる」と話していたクラーク記念国際、広橋公寿監督の話通り、今日も福井に負ければ3度目ですからね、連敗は何として止めないと。今日は、1番の内田が一打席目に初球が甘く来たところを痛打してくれチームに勢いをもたらす大事な一打となった。そこから1点先制でき「これで行ける!」と思った。その裏に同点にされたけれど、それは織り込み済み。リードされたわけじゃないから、選手たちは追い詰められず気持ちを楽に戦うことができた。

閉会式後に笑顔で記念撮影に応じるクラーク記念国際の選手たち
閉会式後に笑顔で記念撮影に応じるクラーク記念国際の選手たち

「やりたいことはできた。相手が強かった」福井工大福井・中村薫監督

 準決勝まで細かなミスがあったが、今日は無失策とうちらしい野球ができた。今大会一番の試合ができたと思う。藤田は強力打線相手に良く投げた。無四球だったし、7回終了時点で(手元集計で)68球と、相手の打ち気を逆手にとり上手く打たせてとった。

 相手の柴田さんは大崩れすることはない好投手だけにあと1本が出なかった。クラークさんは8回に、先頭打者の笠森さんがセカンドの上を超すところまで打球を持っていった。あそこの差だと思います。好投手相手にいかに得点するかが今後の課題です。今日は、相手が強かったです。

見応え十分な好試合を展開した福井工大福井
見応え十分な好試合を展開した福井工大福井

両校監督が口にした「これからも打倒、神戸弘陵」 

 試合後に両校の監督がそれぞれ口にしたのが「打倒、神戸弘陵は、これからも変わらない」だ。広橋公寿監督は「今回もそうだったように、神戸弘陵さんは、日本一に上り詰める間に必ず立ちはだかる相手。自分たちが倒して女子野球を盛り上げないと」と言えば、中村薫監督も「今回、神戸弘陵さんは負けましたが、神戸弘陵一強という図式は変わりません。神戸弘陵さんを倒す力をつけて女子野球を盛り上げないと」とやはり同様の意気込み話す。

 今大会はベスト8に終わった神戸弘陵だが、今夏の選手権大会で日本一を経験した選手が多く残るうえ、もともと意識、技術ともに高い選手が多く集まっているだけに強さは折り紙付き。新チームでの三冠の夢が途絶えた悔しさを来春、来夏にどうぶつけるか。三冠を狙うクラーク記念国際、雪辱を晴らしたい福井工大福井とライバル校も黙っていない。特にクラーク記念国際は、広橋公寿監督が「1年生で左右一枚ずつ楽しみな投手がいる」話すなど、さらに強くなる要素がある。来春の選抜大会が今から楽しみだ。

(写真は全て筆者撮影)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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