Yahoo!ニュース

第25回全国高等学校女子硬式野球選手権 決勝(神戸弘陵-高知中央)

中川路里香フリーランスライター
マウンド上で優勝の喜びをわかち合う神戸弘陵ナイン

 第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会決勝戦が、8月23日に甲子園球場で行われました。女子高校球児たちにとっても夢だった甲子園で、神戸弘陵が5年ぶり2回目の優勝を飾り、女子野球の歴史的一ページ目に名を連ねました。

【決勝】 高知中央 0-4 神戸弘陵

高知中央  000 000 0 0 

神戸弘陵  040 000 X 4

【バッテリー】

高知中央 和田、松本(里)― 村中

神戸弘陵 日高、島野 ― 安藤

神戸弘陵、序盤に一挙4得点 試合を決める

 2回、神戸弘陵は先頭打者4番・正代絢子さん(2年)の内野安打、6番・島田羽菜さん(2年)のライト前ヒットなどで一死一三塁とチャンスを作ると、7番・安藤蓮姫さん(2年)がスクイズを決め、先制。さらに9番・師子鹿南さん(3年)のスクイズ、1番・信貴友郁さん(3年)の2点タイムリーで一挙に4得点し、試合を決めました。

神戸弘陵はスクイズで先制点をあげた
神戸弘陵はスクイズで先制点をあげた

 神戸弘陵・先発の日高結衣さん(2年)は、序盤から大きなリードをもらい、6回まで被安打4と、危なげないピッチングを披露します。最終回のマウンドを託された島野愛友利さん(3年)も、相手打線をきっちり3人で抑え、優勝投手となりました。

チャンスを活かせず惜敗した高知中央

 高知中央は、好投する日高さんの前に苦しみました。四イニングで先頭打者を出すも、そのたびに試みた送りバントは、6回を除いて全て失敗するなど、終始苦しい展開。それならばとヒッティングするも、あと1本がでませんでした。

 最大のチャンスは5回でした。無死、一三塁と最大のチャンスを作りましたが、一塁走者、北條真由さん(1年)が二盗を試みるも刺されるなどして無失点に終わり、最後まで流れを呼び込むことができませんでした。

5回、一塁走者7番・北條さんが二盗を試みるもアウトに
5回、一塁走者7番・北條さんが二盗を試みるもアウトに

 先発した和田千波留さん(2年)は、3回以降は立ち直り、相手に得点させない力投を見せましたが、残念ながら初優勝とはなりませんでした。

力投を見せた和田さん
力投を見せた和田さん

冷静さを見失わない2年生エース日高さん

 この日も好投を見せた日高さん。「甲子園のマウンドはすごく投げやすくて、楽しかった」と振り返った投球内容は、この日最速116キロの速球を中心に、緩急をつけた投球で高知中央打線を翻弄し、6回まで投げ切りました。 

 神戸弘陵・石原監督によれば、「球種を絞られてきていると感じ」5回以降継投に入りたかったそうですが、「ブルペンから、まだ仕上がってないという話と、捕手の安藤が『(日高さんは)まだいける』と話したので続投を決めた」そうです。

 監督の心配が的中したのか、グランド整備明けの5回に先頭から2者連続安打を許すピンチを迎えますが、安藤さんがマウンドに駆け寄り「自分のピッチングをすれば大丈夫」と声を掛けられると、無失点に抑え、期待に応えました。

全試合通して好投した2年生エース、日高さん
全試合通して好投した2年生エース、日高さん

最後は島野さんの笑顔で締めくくり 

 エースとして3年間、チームを牽引してきた島野さん。が、センバツ以降は、島野さんに続く投手育成が、チームの課題となっていたそうです。そんな中、成長してきたのが日高さん。「自分一人で投げ抜かないとと思ってきたところでの日高の成長でゆとりができた。感謝しています」と、今度は抑え投手としてチームを支えてきました。

「1アウトをとれた時が嬉しかった」と振り返る最終回のマウンドでは、先頭打者を三振にとると、ナインに向かって笑顔を見せました。残り2つのアウトをわずか7球で奪うと、マウンドにはナインが駆け寄り、喜びの中心にいました。女子選手初の甲子園での優勝投手となった瞬間です。マウンドから見えたナインは「一人ひとりが輝いて見えました」と嬉しさを表現しました。

先頭打者を三振にとり、ナインへ向かって笑顔で1アウトを示した島野さん
先頭打者を三振にとり、ナインへ向かって笑顔で1アウトを示した島野さん

 中学時代に全国大会優勝投手に輝いて一躍脚光を浴びてからというもの、高校3年間も常に注目されてきた島野さん。女子野球を広めたい一心で、臆することなく脚光を浴び続けてきました奇しくも最後の夏に甲子園で優勝が実現しました。戦いを終え「甲子園という舞台が女子野球にとって身近になれば、見て下さる方も増えると思います。これからも女子が目指す場所が、常に甲子園であって欲しい」と話しました。

石原監督の談話

「前回優勝が20回、今年は25回大会と節目であったということ、ましてや決勝戦が甲子園でできるとあって、是が非でも優勝を目指してきた。感無量です。かつてOGたちに『最後の夏に勝って終わりたい』と言われた言葉がずっと心の中にあった。それだけに、絶対に負けないチームを作ろうと懸命にやってきた。それが実って本当に嬉しい。

 高知中央は、打よりも守りのチームという印象。ノックを見ると非常に動きがよく、仕上がっていた。

 決勝戦、甲子園という異様なムードがある中、先制点だけはやれないと思っていた。先制での場面は、(高知中央の)和田さんの変化球にやられていたので、手堅くスクイズで取りにいった。1点よりも2点ということで、さらにスクイズで追加点を狙いに行った」

「甲子園での試合を実現して頂いた事は、様々な関係者のみなさんのご尽力によるところ。本当に感謝しています。今後、女子野球の底辺が広がり、大会への参加校が増え、甲子園をめざす選手が増えると信じています」

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

中川路里香の最近の記事