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芝野虎丸名人、勝負の3、4月 十段戦挑戦手合と本因坊戦挑戦者決定リーグ戦

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
王座就位式での芝野虎丸名人=2020年2月7日第一ホテル東京にて、筆者撮影

3月3日から十段戦挑戦手合が始まる。

井山裕太棋聖(30歳)から十段を奪った村川大介十段(29歳)に芝野虎丸名人(20歳)が挑戦するシリーズだ。

今年の囲碁界の勢力図を決める重要な勝負となる。

現在のタイトルホルダーをおさらいすると、以下になる。

井山裕太三冠(棋聖・本因坊・天元)

芝野二冠(名人・王座)

羽根直樹碁聖

村川十段

4月末までに決着

芝野名人はこれまで、登場したすべての挑戦手合でタイトルを獲得している。今回、十段を獲得すれば三冠となり、井山棋聖とタイトル数で並ぶということだけでも、注目度が高くなっている。

昨年の十段就位式の村川大介十段。合同で表彰された藤沢里菜女流名人とともに。=2019年6月、東京・港区。筆者撮影
昨年の十段就位式の村川大介十段。合同で表彰された藤沢里菜女流名人とともに。=2019年6月、東京・港区。筆者撮影

村川十段と芝野名人の対戦成績は、村川十段の1勝2敗

直近は、芝野名人が2連勝(どちらも名人戦リーグ)しており、勢いは芝野名人にありそうだ。

十段戦は五番勝負。フルセットまでもつれると、4月28日に決着する。

井山の持つ本因坊も視野

さらに、井山棋聖の持つ「本因坊」の挑戦権も、芝野名人は手の届くところまで来ているのだ。

本因坊戦挑戦者決定リーグ戦はあと2ラウンド。大詰めを迎えようとしている。

現在、4勝1敗でトップ集団を形成しているのが3人。芝野名人、一力遼八段(22歳)、許家元八段(22歳)の「ポスト井山」の3人。「令和三羽ガラス」だ。

3月ラウンドで一力八段と許八段が激突するので、どちらかが2敗となる。

芝野名人が残り2局を勝てば、少なくとも同率決定戦に進める。

井山棋聖はこの3人すべてとタイトル戦で戦ったことがある。

一力八段は棋聖戦や天元戦など5回挑戦し、ことごとく敗退している。

井山棋聖がタイトル戦で負けたことがあるのは、許八段と芝野名人。

許八段には一昨年碁聖を奪われ、2度目の七冠が崩れたきっかけになった。しかし、昨年の天元戦で挑戦を退け、リベンジに成功している。

芝野名人とはまだ、昨年の王座戦の1シリーズのみ。王座戦は五番勝負で、持ち時間も3時間と短い。本因坊戦は持ち時間8時間、2日制で、井山棋聖が最も得意とする。

2日制でどんな戦いが繰り広げられるかも興味深いところだ。

本因坊戦の挑戦者は、4月上旬に決まる。

3、4月の芝野名人の活躍で、今年の囲碁界の勢力図が見えてくる

囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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