「チーム地球」の一員としての日本の5つの優先課題――SDGs週間に考える

ノルウェー皇太子がつけているSDGsのピンバッジ(写真:Splash/アフロ)

  • 2030年までの中期目標であるSDGsは、世界全体で取り組むべき17の目標からなり、いわば「チーム地球」にとっての課題でもある
  • 国連のランキング評価によると、日本の取り組みは世界全体で第17位に位置しており、これは決して悪い成績ではない
  • ただし、何年にもわたって「重要な課題」と評価される項目もあり、これらは日本にとって優先的に底上げを図るテーマといえる

 世界全体で取り組むべき課題のうち、日本がとりわけ手薄と指摘されるのは、貧困と格差、ジェンダー平等、化石燃料の大量消費、生物多様性、そして公正な資金の流れである。

「チーム地球」としての課題

 9月18日から26日は、国連のSDGs週間にあたる。最近では鉄道車両などにもSDGsのカラフルなロゴでラッピングが施されたものが各地で登場しており、認知度は徐々に上がっている。

画像
  • (出所)国連広報センター

 日本語で「持続可能な開発目標」と呼ばれるSDGsは、2015年に国連総会で採択された、2030年までに世界全体で取り組むべき中期目標を指す。そこには極度の貧困をなくす、飢餓の撲滅、ジェンダー平等の実現、イノベーションの促進、地球温暖化対策など17の大きなゴールが掲げられ、そのもとに169のターゲットが設定されている。

 これらはいずれも世界全体に共通する課題であり、いわば「チーム地球」としての取り組みが求められているものばかりだ。

画像

 各国での進捗を測るため、国連は毎年各国のSDGsへの取り組みを評価し、その結果をランキング形式で発表している。7月に発表された今年の順位で日本は世界17位。2016年以来、日本は20 位以内に入っており、世界全体でみれば決して悪い成績ではない。

 その一方で、例年のように改善が求められ続けている課題もある。下記の表は、この3年間の日本の取り組みに関して「重要な課題(Major challenge)」と評価された項目だ。

画像

 これらはいわば日本で取り組みが遅れており、優先的に「底上げ」を図るべき領域といえる。以下で、これらを5つのグループに分けてみていこう。

貧困と格差の悪化

 まず、貧困である。日本ではアフリカなどで広くみられる、1日1.9ドル未満の「絶対的貧困層」は稀だが、貧困や格差は相対的なものであり、物価水準などが異なれば、貧困の基準も異なる。

 SDGsレポートの日本に関する評価では、「税金徴収や再配分の後の貧困率(所得の中央値を下回る割合)」が3年連続で「重要な課題」となった。日本の約15%という水準は、先進国ではアメリカ(17.8%)に迫るもので、むしろチリやメキシコなど新興国に近い

 これに加えて気になるのは、格差の大きさを表すパルマ比率(上位10%が得ている所得の下位40%の所得に対する比率)がこの2年連続で「重要な課題」と評価されたことだ。日本の数値は1.3だが、この水準はアメリカ(1.76)やイギリス(1.52)を下回るものの、先進国のなかでは格差が大きい部類に入る。

 コロナのダメージは立場の弱い非正規雇用などでとりわけ大きいため、日本で今後、貧困と格差がさらに悪化する可能性は大きい。

先進国最低レベルのジェンダー平等

 次に、ジェンダー平等だ。SDGsレポートでは、3年連続で「議会における女性議員の割合」や「性別賃金格差」が「重要な課題」と評価されている。

 このうち、女性議員の割合は10%前後にとどまっており、これは先進国中最下位レベルであるばかりか、ほとんどの途上国と比べても低い水準にある。

 これに対して、フルタイム労働者および自営業者のなかでの男女間の賃金格差は24.5%(2020)。これは先進国のなかでも屈指の高水準で、SDGsランキングの首位常連であるスウェーデンと比べると約3倍も大きい。

画像
  • (出所)Sustainable Development Goals ウェブサイト. 先進国中、オレンジ線は日本、青線はスウェーデンを表す。

 政府や企業は女性の参画をことあるごとに強調するが、その道のりは遠い。

化石燃料の大量消費

 第3に、エネルギーを大量に消費するライフスタイルだ。

 SDGsレポートによると、日本に関する評価では、「エネルギー浪費」や「一人当たりCO2排出量」が3年連続で「重要な課題」としてあげられている。とりわけ、日本の一人当たりCO2排出量8.8トンに関していうと、これより上位にくるのは中東などの産油国がほとんどというほど多い

 日本の自動車や家電はエネルギー効率の良さで知られるが、消費の総量が多ければ、いくら効率が良くても追いつかない。

 しかも、その多くは石油や天然ガスといった化石燃料で、再生は不可能だ。日本の「再生可能エネルギーの占める割合」もまた3年連続で「重要な課題」と評価されている。

 日本ではCO2排出などにかかる税金などが安く、これが欧米と比べて風力や地熱など再生可能エネルギーの利用や、ガソリン車に比べて温暖化に負荷の小さい電気自動車への転換が進んでいないことの一因といえるだろう。

陸と海の生物多様性

 第4に、生態系の保全についてである。SDGsレポートでは、日本の「過剰に捕獲された魚介類の割合」は70.8%(2020)で、先進国中屈指のレベルであり、3年連続で「重要な課題」と評価されている。

 海に囲まれた我が国では、海の恵みを享受することに慣れ親しみすぎて、それが有限であることへの意識がかえって薄いのかもしれない。

 さらに今年は、輸入を通じて海外の生物多様性を脅かしていることも「重要な課題」と評価された。つまり、食糧やそれ以外の目的で動植物を輸入するなかで、結果的に海外の生態系に悪影響を与えている割合が高いと評価されているのだ。

 また、絶滅危惧種に関するレッドリスト指数も低評価のまま推移し続けている。

公正な資金の流れ

 最後に、国際的な資金の流れに関してである。SDGsレポートでは、国内総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の割合の低さが3年連続で指摘されている。

 西側先進国で構成される開発援助委員会(DAC)では、GNIの0.7%を援助に向けるよう勧告しているが、日本の場合は0.2%にとどまる。金額ベースでいえば、日本の援助額は西側先進国のなかで米・独・英・仏につづく第5位だが、日本よりGDPが小さい独・英・仏よりODAが少ないことに表れているように、その経済規模と照らすと必ずしも国際協力に熱心とはいえない。

画像
  • (出所)Sustainable Development Goals ウェブサイト. 先進国中、オレンジ線は日本を表す。

 これに加えて、金融秘密度スコアの高さも、SDGsレポートで3年連続「重要な課題」と評価されている。金融秘密度スコアとは、銀行の守秘性、企業の情報公開制度、税務当局による納税者情報の把握などによって算出される。いわゆるタックスヘイブンはこれが高いが、日本もそれらに並ぶ水準にある。

 シティ大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授は、企業情報の秘匿性を重視するシステムが違法なマネーロンダリングや企業の租税回避の温床になりやすいことから、財政の民主的統制を骨抜きにするばかりか、公正な競争を歪め、貧富の格差を拡大させると指摘する。不公正な資金の流れは、日本ばかりか世界にとっても有害といえる。

 ちなみに、日本はイギリスのシンクタンク、タックス・ジャスティス・ネットワークが評価する「金融秘密度指数」の2020年報告でも、世界全体で上から7位の金融秘密大国である。 

トレンドを超えて

 念のために繰り返すと、日本の評価は全体としては決して低くない。とはいえ、問題がないわけでもなく、ここであげられたのは、指摘され続けてきたものだ。

 裏を返すと、これらが改善されなければ今後、世界全体における日本の順位は下がり続けかねない。2017年以降、日本の総合評価は下がり続けているが、これは各国がSDGsに沿った改革を行なってきているからでもある。

 日本政府も2018年の「拡大版SDGsアクションプラン2018」を皮切りに、地方自治体、民間企業、大学などに協力を呼びかけている。最近あちこちで目にするロゴの多くは、その考え方に賛同し、普及を図るためのものである。

 しかし、企業のなかには既存の取り組みにSDGsのラベルを貼って、いかにもグローバルなトレンドに配慮していますとアピールするにとどまることも少なくない。そうした「格好だけ」を乗り越え、これらの課題に国全体で優先的に取り組めるかは、消費者・有権者のマインド次第ともいえる。日本に暮らす人々がSDGsに関心を向けることは、世界のためであると同時に日本のためでもあるのだ。