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自分の鼓動がグラフィカルな演出と合わさるVRの世界で体験するデジタル茶道の世界観

武者良太ガジェットライター
写真提供:Psychic VR Lab

8月30日より9月9日まで、イタリアのヴェネツィアで開催されるヴェネツィア国際映画祭。コンペティション部門には濱口竜介監督の『悪は存在しない』、ノンフィクション部門には坂本龍一の長男である映像作家 空音央が製作に携わった『Ryuichi Sakamoto | Opus』といった日本勢の作品もラインナップされています。

またXR部門である「Venice Immersive」には、『Beyond a bit - 想像のちょっと先へ』『Cubes (Experimental)』といった日本のVRChatユーザーが製作したVRメタバースのワールドなどが選出。世界中で(VRChat内で)体験できるほか、4年連続でXR部門にノミネートされた伊東ケイスケ氏の新作「Sen」のデモンストレーションも現地で公開されます。

ここでは、日本で開催された体験会のレポートを記します。

Google Pixel Watchで計測した心拍数が演出に活かされる

写真提供:Psychic VR Lab
写真提供:Psychic VR Lab

「日本の伝統文化である茶道をベースに、XRを通じて自己を深く見つめる体験を作りたいと考えた」という伊東ケイスケ氏。そのインターフェースとして選んだのが、VRヘッドセットであり、3Dプリンタで再現した千利休型茶碗・万代屋黒を用いた触覚デバイスと、心拍数を計測するGoogle Pixel Watchです。

写真提供:Psychic VR Lab
写真提供:Psychic VR Lab

体験者は自分の鼓動とともに振動する茶碗を持ちながら、仮想空間内の2畳の茶室のなかで広がる光の演出を体験します。この光は茶碗と同じく自分の鼓動と融合しており、いつしか2畳という狭い空間のなかから壁や、現実の空間を感じさせない広大な世界へと旅立ちます。

このVR茶会のテーマは、輪であり、和と感じた

写真提供:Psychic VR Lab
写真提供:Psychic VR Lab

「Sen」の世界に入り込んでいる体験者には、お茶の精霊である「Sen」とともにこの世界を旅します。このSenは体験者の数だけ存在し、ときに遊び合いながら茶道の世界観を見てまわります。

VRヘッドセットを被っているために、同時に体験している人の気配は感じ取れないのですが、Senの姿によって自分は人と繋がっているという体験が得られる設計になっています。

写真提供:Psychic VR Lab
写真提供:Psychic VR Lab

お茶の味はなし。味覚を刺激する作品ではありませんが、人とつながり、世界とつながり、四季の変化とつながりを視覚と触覚で味わい、最後に戻ってきた茶室のなかにかけられていた掛け軸に記されていたのは「◯」。マル、輪です。さまざまなつながりや関係性が転じて和となることを意識させられた時間でした。

Source: PR TIMES

ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

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