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新宿の街角スポットで仮想空間にダイブできた新サービス「スグバース」を体験してきた

武者良太ガジェットライター
(筆者撮影)

VRヘッドセットを用いてログインするVRChatは、数あるメタバースのなかでも自由度の高さが魅力となっています。

この世界の中にはライブハウスもあれば劇場もある。毎朝ラジオ体操をするために集まるコミュニティもあれば、キャバクラやホストクラブといったロールプレイに従事するコミュニティもある世界です。アバターを用いて好きな見た目の自分になる、だけではなく、行動スタイルも自由に選べる・作れる世界といえます。MMORPGの理想形の1つかもしれません。バトルできるゲームワールドもたくさんありますから。

8月18日にはAndroid用のα版もリリースされ、今後は手元のスマートフォンでアクセスできるようになる見込みですが、現時点ではまだ体験するためのハードルが高い。そんなVRChatをできるだけお手軽に体験できるようにしたいという想いから、姫宮VIGサービスがはじめたサービスが「スグバース」です。

現実のカフェスペースなどの店舗からVRChatに入れるスグバース

(筆者撮影)
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世界初の店舗型サービスとして始まった「スグバース」は、街にあるカフェやイベントスペースを活用し、ハードウェアやアカウントを用意しなくてもVRChat体験ができるサービスです。

8月18日、小田急電鉄が運営する新宿のXR体験施設NEUU(ニュー)にて実際のイベントが開催されるというので行ってみましたが、これが良い。とても良い体験でした。

バーチャルアテンダントのこんぶちゃんは、VRChat歴7000時間超

(筆者撮影)
(筆者撮影)

イベント体験者は最初にNEUUおよびVRChatの説明を受けてから、大型テレビに映し出されるバーチャルアテンダントのこんぶちゃんとお話をします。いきなりVRの世界にダイブするのではなく、機材を身に着けないままVRChat内にいる方とのコミュニケーションします。

VRChatで過ごした時間は7000時間を超えるというこんぶちゃんとお話していると、ケア力の高さに気が付きます。VRChatの操作に戸惑っている方に対して、何に困っているかを素早く察知して、的確な操作方法・設定方法を伝える力を持っているんだなと感じます。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

こんぶちゃんのほうにも、WEBカメラで捉えたこちらの現実空間が見えるようになっているため、手を振ったりコール&レスポンスも可能。アニメのキャラクターのように見えるアバター姿ですが、人が宿っているんだなということが強烈に伝わってくるんですね。

参加者全員で現実世界からバーチャル世界へダイブする

(筆者撮影)
(筆者撮影)

続いて、参加者全員でVRヘッドセットをかぶって、こんぶちゃんのいるVRChatワールドにアクセス。さっきまでは現実空間で隣にいた現実の人々が、様々な姿のアバターになっていることに気が付きます。見た目は異なるけど声や話し方、コミュニケーションの仕方は同じなので違和感がありません。

またさっきまでは現実で会っていた人と一緒にバーチャルの世界にいるから、安心感が強い。一緒に仮想空間のなかで旅をしたくなる仲間なんだ、という感覚が芽生えてきます。

(撮影:MICKELさん https://twitter.com/MICKEL_xR)
(撮影:MICKELさん https://twitter.com/MICKEL_xR)

現実からバーチャル空間を見るワンクッションからの、バーチャル空間へのアクセス。この流れは初めてVR機材に触れる人でも、VRChatの世界観に慣れていない人でも、マイペースな気持ちのままアバターとのお話に没頭できる仕組みだと感じます。

VRChat内でのサービス提供でアバターワークを浸透させたい

(筆者撮影)
(筆者撮影)

「スグバース」を提供している姫宮VIGサービスの中橋篤さんは、長らくVR関連のサービスに関わってきた人物です。その中橋さんは「スグバース」で、VRChat内での接客サービスの普及に努めたいと語ります。

現状、VRChatには課金システムが備わっていません。そのためVRChatを活用したビジネスには限界があります。しかし「スグバース」は現実の店舗サービスと組み合わせることで、重力など物理現象に囚われないバーチャル空間ならではのとびっきりの体験を、テーマパークのアトラクションを街角で遊べるようなお手軽さで味わえるビジネスモデルとなっています。イベント参加費も映画を見るのと同じくらいの価格帯で、「ちょっと体験してみよう」と意識できるもの。そして得た収益をVRを案内してくれるバーチャルアテンダント=アバターワーカーの収入とすることができるシステムでした。

また筆者が見て、体験した限りは、休業日や休眠中の飲食施設・イベントスペースを使ったビジネス展開ができそうだと感じました。様々な地域で現実とバーチャルを結び、現実からバーチャルへと送り込めるサービスともなりそうですし、VRChatには一人でも、子供連れの家族でも、カップルでも、老若男女を問わず楽しめるコンテンツが盛りだくさん。現在もワールドの開発者と提携して、誰がみても魅力ある体験ができるワールドへの案内をしているそうです。

VRChat社CEO・Graham Gaylor氏は「スグバース」に対して、以下のコメントを寄せています。

私たちは、新しいプレイヤーの皆さんへ姫宮VIGサービスがお送りする、本物の VRChat 体験を提供するサービス「スグバース」に、非常に興奮しています。 この取り組みは、まだ VRChat の魔法にかかる機会を持っていない人々に素晴らしい機会を提供します。 今、皆さんはスリル満点の冒険に乗り出し、新しい友情を築き、これまでにない新しい世界を探索することができます。(小田急電鉄XRクリエイターコミュニティBTFSのnoteより)

VRヘッドセットは持っていないけど、VRならではのすごい没入感でもって異世界や未来世界などを味わってみたい。そんな方々にとって、初めてのVR体験をするのにふさわしいサービス。それが「スグバース」だと感じました。興味がある方は、公式サイトなどで、次のイベント実施日を確認してみてください。

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ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

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