絵師の筆使いの軌跡もアートとなる時代を予感させてくれたVR美術館「Metamorphosis」
月18~19日、デジタルペンや液晶ペンタブレットなどクリエイター向けPC周辺機器メーカーのワコムが東京・新宿住友ビルにてカンファレンス「Connected Ink」(コネクテッドインク」を開催。またVRメタバースの1つVRChatでも、パーティクルアート展示会ワールド「Metamorphosis」を公開しました。
仮想空間でアーティストの筆の軌跡を展開
今回の取り組みはワコム、マンガ・イラスト・アニメ制作向けペイントソフトのCLIP STUDIOのメーカーであるセルシスと、機械学習技術に長けたPreferred Networks(プリファードネットワークス)が手を取り合い、デジタルペンの動きのデータを3次元のCG(点群データ)とするKISEKI ART(軌跡アート)プロジェクトの一環によるもの。
「Metamorphosis」のディレクションを務めた動画クリエイターのタカオミさん(@takamin_)いわく、KISEKI ARTプロジェクト用のCLIP STUDIOを使うことで作品制作時のすべてのタッチ&ストロークデータを記録していったそうです。
右側の透明の球に入っている光の粒=パーティクルが、KISEKI ARTの取り組みによって可視化された点群データです。
これを見ただけでは、何を意図としているものかわかりませんが、実に6万ストロークぶんのデータが入っているそうです。
(写真:筆者撮影)球にふれるとパーティクルが空間に広がり、作品を描いたアーティストの筆の軌跡の1つ1つが再現されていきます。
すべての軌跡データが展開されたとき、はじめて完成品の絵が眼前に大きく映し出されます。
面白いのが、この軌跡データはアーティストによって個性があるとのこと。タッチやストロークのクセということでしょうか。複数のアーティストに同じ絵を書いてもらっても、軌跡データはアーティストごとに異なってくる。そこでワコムは軌跡データを人間の指紋になぞらえて絵紋と呼んでいるそうです。
この価値ある軌跡データを見せるのに使われたのが、VRChat。VRヘッドセットを通じて仮想空間に没入できる環境だからこそ、現実世界での展示が不可能なインスタレーションも可能になるということなのでしょう。
パーティクルを用いたアートパフォーマンス
パーティクルを活用したライブパフォーマンスも見せていただきました。
VRChatでは以前から、仮想空間内の立体ステージ上で光の粒を音楽に合わせて踊らせるライブパフォーマンスを魅せるアーティストが存在していましたが、この新しいアートを知っているのはVRChatユーザーばかり。残念ながら認知が広がっていません。
そこでワコムユーザーをはじめとした多くの人々にパーティクルライブを体験してもらうための施策となったのでしょう。パーティクルライブアーティスト・けいしーさん(@keisy_isla)の手による、KISEKI ARTの絵紋を活用した作品が体験できました。
完成形は2Dのイラストであっても、KISEKI ARTの絵紋やパーティクルによって仮想の3次元空間を満たす展示が可能だということ。「Metamorphosis」にはVRメタバース時代とともに広がってゆくであろう、新しいアートが芽吹いているように感じました。
前述しましたが、この「Metamorphosis」は本日11/19まで開催されております。体験するにはゲーミングPCまたはゲーミングPC+VRヘッドセットが必要となります。
入場は無料。VRChatで「Metamorphosis」ワールドを検索し、パブリックインスタンスに入った場合は20時、21時、22時、23時に録画版のライブが鑑賞できるので、「Metamorphosis」ワールドの最奥まで進みましょう。またVRChatアカウント・Connected Inkさんが立ち上げたプライベートインスタンスであれば、20時、22時にワールド案内及びけいしーさんによる生ライブが楽しめます。事前にConnected Inkさんにフレンドリクエストを送り、定刻と共にJoinしましょう。