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WBC韓国代表のイ・ジョンフが左足首手術で全治3か月 「早く回復して、必ずグラウンドで」

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
イ・ジョンフ(写真:キウムヒーローズ)

KBOリーグの昨年のMVPで、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも韓国代表選手として活躍したキウムの外野手、イ・ジョンフ(李政厚、24)が負傷により戦列を離れている。

イ・ジョンフは7月22日のロッテ戦(プサン)での守備時に、雨で湿った芝に足を取られ左足首を痛めて交代。検査の結果、左足関節前距腓じん帯損傷と診断され27日に手術を行った。

今回の離脱に至るまで、今年のイ・ジョンフはこれまでとは違った激動の日々を過ごしてきた。メジャーリーグ進出を見据えた打撃フォーム改造に始まり、3月にはWBCに出場。そしてプロ7年目の開幕をチームの新キャプテンとして迎えた。

イ・ジョンフは過去6シーズン絶えず好成績を残し、昨季は2年連続となる首位打者を獲得。通算打率は歴代1位(3000打席以上)の3割4分2厘を誇る。だが今季4月末時点の打率は2割1分8厘にとどまった。

イ・ジョンフは4月中旬、自身の打撃についてこう話した。「速い球に簡潔に打とうとし過ぎて、自分の長所を失っている状態です」。その長所について大きく身振り手振りを加えて説明を始めた。

「弓を射る時に両手を胸の前から外にギューっとゆっくり引きますよね。最大限まで開ききったところで矢から指をパッと離すと勢いよく飛んでいきます。そんな感じで打てるのが自分のいいところでした。しかし今は胸の前で両手をちょっとだけ左右に開いただけで、パッと矢を離して飛ばしていってしまう、そんな感覚です」

イ・ジョンフは「ボールを長く見てバットを出す」という長所が、メジャーの速い球に対応するためにフォームを変えたことで失われていた。

イ・ジョンフは打撃練習を通して試行錯誤を重ね、5月中旬に昨年までのようにトップ(スイングの開始位置)を上げ、狭めたスタンスを元に戻す決断をした。すると連日、複数安打が出るようになった。「自分にとって一番無理がないのが、昨年までのフォームでした」

6月には本調子となり、7月は46打数20安打を記録。打率をリーグ6位の3割1分9厘まで上げ、シーズン終盤に向けてチームをけん引しようとする中で負傷の憂き目にあった。

イ・ジョンフの不在はチームだけではなく、韓国球界にとっても痛手だ。イ・ジョンフは10月に行われるアジア大会(中国・杭州)の代表選手でもある。25歳以下を中心に構成されたメンバーの中で、前回大会(2018年ジャカルタ)を経験している唯一の存在だ。

医師の診断は復帰まで約3か月でアジア大会参加は不透明。また、今季中に復帰出来ず、もし来季のメジャー行きが叶った場合、「負傷退場がKBO最後の出場?」という心配の声もある。

イ・ジョンフ(写真:キウムヒーローズ)
イ・ジョンフ(写真:キウムヒーローズ)

そんな中、イ・ジョンフは手術後、自身のインスタグラムのストーリーズに病院のベッドに横たわる写真とともにファンに向けたメッセージを公開した。「早く回復して、必ずグラウンドでまたお会いしましょう」。

「早くグラウンドに戻りたい」。25年前にも手術後にそんなコメントを残した選手がいた。1998年6月23日の試合で死球により右ひじを骨折。「全治3か月」と診断されるも、「初めての子供が生まれる予定日(9月3日)までにはグラウンドにいたい」とリハビリに励んだ。

赤ちゃんは予定より早く8月20日に誕生。さすがにその日には間に合わなかったが、9月10日の2軍戦で復帰。19日に1軍のグラウンドに立った。その選手は中日の韓国人選手、イ・ジョンボム(李鍾範)。生まれてきた男の子がイ・ジョンフだ。

イ・ジョンフは29日に退院。来週から復帰に向けたリハビリを2軍施設で開始するという。

⇒ 2023年 韓国プロ野球個人成績(ストライク・ゾーン)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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