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侍ジャパン・栗山英樹監督がWBCに向け韓国視察 現地記者「日本シリーズの最中になぜ来たのですか?」

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
韓国のプレーオフ観戦中の栗山英樹監督(写真:スポーツ朝鮮)

来年3月に行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、野球日本代表・侍ジャパンを率いる栗山英樹監督が今週韓国を訪問。ソウル・チャムシル球場でLGツインズとキウムヒーローズが対戦する、KBOリーグのプレーオフ第1、2戦を視察した。

十数年前の韓国球界では日本の代表チーム関係者が訪れるというと、「情報流出」を心配する声もあったが、今は映像や詳細なデータがどこにいても手に入る時代。栗山監督の訪問にピリピリしたムードはなく、むしろ「日本シリーズをやっている時期なのにわざわざ来た」という歓迎の様子だった。今年3月にKBO総裁(コミッショナー)に就任したホ・グヨン氏も、栗山監督との再会を喜んだ。

栗山監督の韓国のポストシーズン訪問は、評論家時代の2005年韓国シリーズ以来17年ぶりだ。

17年前にチャムシル球場でサムスンのソン・ドンヨル監督(当時)にインタビューする栗山現代表監督(写真:ストライク・ゾーン)
17年前にチャムシル球場でサムスンのソン・ドンヨル監督(当時)にインタビューする栗山現代表監督(写真:ストライク・ゾーン)

プレーオフ第1戦の試合途中、栗山監督は韓国メディアの要望によりインタビュー(囲み取材)に対応。日韓両サイドから依頼を受けた筆者が通訳を務めた。以下はその一問一答。代表質問ではなく複数の記者が訊ねた。

記者 今、日本シリーズの最中ですが、このタイミングで韓国にいらっしゃったのはどうしてですか?

栗山 10年間ファイターズで監督をやっていて、なかなか他の国の野球を見る機会がありませんでした。しかし以前は韓国の底力をずっと見てきたので、WBCに向かって勝負がかかった試合を見て、肌で感じたくて来ました。

記者 この2チーム(LG、キウム)の試合を選んだ理由は?

栗山 「どのカードを見るか」や、「(見たい)投手にスケジュールを合わせる」ことも考えましたがスケジュール上、この日になりました。みなさんもわかっている通り、このカードにも代表に入る選手が何人かいるので、見たいと思っていました。

記者 失礼な質問かもしれませんが、ファンもメディアも大谷(翔平)選手が韓日(日韓)戦に出場するか気になっています。

栗山 日本だけではなく韓国、アメリカのみなさんが、「どういう選手を見たいのか」はもちろん知っています。野球人としてやらなきゃいけないことは理解しています。ただメジャーリーグの選手からはまだ、誰ひとり正式な返事をもらっていないので僕はそれを待っています。答えがくれば言えますけどまだ待っている状態です。世界の野球ファンが求めていることはわかっているつもりです。

記者 韓国の選手の中で、特に注目している選手はいますか?

栗山 イ・ジョンフ選手(キウム)と、先程タイムリーを打ったキム・ヒョンス選手(LG)の勝負強さは、ずって見てきた選手なので知っています。みなさんが思っている以上に選手の名前は(頭に)入っています。韓国の選手の勝負強さや、勝負がかかった試合での魂を見たいと思って来ました。そういった怖さは一番知っているつもりです。そして夏にサンディエゴ(アメリカ)に行った時に、パドレスのキム・ハソン選手もしっかりと見ることが出来ました。

記者 イ・デホ選手(ロッテ)の引退が日本代表チームの構成に影響を与えますか?

栗山 相手の選手がどうというよりも、自分たちがすべきことをしっかりとするということがあります。イ・デホ選手にはファイターズ時代に本当に頭を悩まされました。ああいうバッターと一緒に野球をやりたいと思っていました。長い間球界を支えてくれて、今年もいい成績を残したということで「お疲れさまでした」と言いたいです。

記者 昨年の東京オリンピック(五輪)のメンバーを中心とした構成となるのか、それとも11月の強化試合の顔ぶれが代表入りするのでしょうか?

栗山 11月の強化試合が終わった後、過去の成績だけではなく若い選手の勢いも必要なので、もう一回、頭を真っ白にして考えます。他のチームにはメジャーリーガーがたくさん入ってきます。そこに勝てる強いチームを作ります。

記者 韓国の投手はずっと、ヤン・ヒョンジョン(KIA)、キム・グァンヒョン(SSG)が中心でしたが、東京五輪で世代交代が出来ました。警戒するような投手はいますか?

栗山 誰というより短いイニングをしっかり投げる投手の強さを感じています。うまい形でつながれていく怖さはあるので、これからしっかりと調べていきます。

(スタンドの歓声がインタビューの場所まで響く中)

栗山 みなさん、試合見なくて大丈夫ですか?

記者たち (笑) ダイジョウブ!

栗山 ああ、大丈夫(笑)

記者 韓国ではアン・ウジン※(キウム)という投手のことが話題になっています。監督はその投手のことはご存じでしょうか?

※今季、防御率(2.11)、奪三振(224)共にリーグ1位で、15勝(同2位タイ)を挙げた23歳の右腕。高校3年の時に仲間と後輩に暴行を振るったとして、大韓野球ソフトボール協会から資格停止処分を受けた。また大韓体育会の規定で五輪、アジア大会などの国家代表チーム参加不可選手となっている。しかしWBCはMLB主催の大会のため代表入りは可能だが、世論の反発が強く出場は難しい状況にある。

栗山 色んな事情があるのはわかっています。人間色んなことがありますが、若い人たちが野球を通して世界に向かっていくことに、頑張って欲しいと思っています。ただ個人的に言えば、いいピッチャーは出てこない方が勝ちやすいですけど、そんなことよりも彼がもっともっと大きくなれるように応援しています。

プレーオフ第2戦のチャムシル球場(写真:ストライク・ゾーン)
プレーオフ第2戦のチャムシル球場(写真:ストライク・ゾーン)

20名弱の韓国記者が囲んだインタビューは、十数分間に渡って行われた。

日本と韓国はWBC1次ラウンドが行われる東京ドームで、来年3月10日に対戦することが決まっている。

⇒ 2022年 KBOリーグポストシーズン日程表(ストライク・ゾーン)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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