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李大浩の引退試合ドキュメント 打って投げて二刀流、サイン待ちに徹夜組、青木(ヤクルト)からコメントも

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
8回表にマウンドに上がったイ・デホ(写真:ロッテジャイアンツ)

韓国を代表する打者でオリックス、ソフトバンク、メジャーリーグでもプレーしたイ・デホ(李大浩、ロッテジャイアンツ)が現役生活に別れを告げた。

イ・デホは2021年のシーズンを前にFA権を行使してロッテに残留。その時に2年契約を結び、契約最終年となる22年限りの引退を公言した。

40歳でのラストイヤーは141試合に出場し、3割20本100打点の好成績をマーク。「まだやれる」、「引退しないで」という声が上がる中、とうとうその日がやってきた。

10月8日プサンサジク球場。イ・デホの引退試合ドキュメント。

球場前広場の展示(写真:ロッテジャイアンツ)
球場前広場の展示(写真:ロッテジャイアンツ)

10時53分(試合開始6時間7分前)

イ・デホのサインを待つ長蛇の列(写真:ストライク・ゾーン)
イ・デホのサインを待つ長蛇の列(写真:ストライク・ゾーン)

気温20度、晴天のプサン。球場前の広場には20代を中心とした男女(六割方女性)が、400人程集まっていた。この日の開門は15時、チケットは完売している。彼、彼女たちが早くから球場に訪れたのは選手にサインをもらうためだった。

選手駐車場と球場入口が離れているサジク球場は、球場入りする前に選手がファンのサインの要求に応じるのが慣例となっている。

この日はイ・デホ専用の列が作られ、この時点で約150人が並んでいた。一番乗りは前日の夜9時10分に到着した男性。イ・デホのイラスト画を手にして、「イ・デホ選手はプサンで一番の英雄です」と話した。

11時54分(試合開始5時間6分前)

選手たちが到着し始める。イ・デホを待つ列はどんどん長くなる。

12時09分(試合開始4時間51分前)

イ・デホが到着。一人ずつサインをしていく。球団職員が「これは公式な行事ではなく、時間に限りがあるので申し訳ないですが、全員にサインは出来ません」と列の後方に説明しながら歩く。

ペンを走らせるイ・デホ(写真:ストライク・ゾーン)
ペンを走らせるイ・デホ(写真:ストライク・ゾーン)

12時36分(試合開始4時間24分前)

「あー大変だ」と言いながらイ・デホはペンを動かすが、30分近くが経過したところで準備の時間となり、現役最後の球場入りをした。

球場入りしたイ・デホ(写真:ストライク・ゾーン)
球場入りしたイ・デホ(写真:ストライク・ゾーン)

13時00分(試合開始4時間前)

球場前広場ではファンたちが写真撮影に興じた。広場には引退試合のテーマタイトル「RE:DAEHO」と記されたパネルに、イ・デホのこれまでの活躍の歴史を写真にて展示。その前でファンはポーズを取った。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

13時20分(試合開始3時間40分前)

ロッテの全体練習がスタート。イ・デホは4分遅れてその輪に加わる。この日は4番一塁で出場のため、ファーストの守備練習も行う。

13時41分(試合開始3時間19分前)

イ・デホとヤン・サンムン元監督(写真:ストライク・ゾーン)
イ・デホとヤン・サンムン元監督(写真:ストライク・ゾーン)

この日の中継の解説者で、過去にロッテの監督を2度務めたヤン・サンムン氏がグラウンドに。「監督にはチームの成績が振るわず、申し訳なかったです」とイ・デホ。

13時50分(試合開始3時間10分前)

イ・デホ、現役最後の打撃練習開始。フェンス前で落ちる打球に声を上げて悔しがる。

14時00分(試合開始3時間前)

ヤン元監督と中継局のインタビュー。

14時39分(試合開始2時間21分前)

公式記者会見開始。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

イ・デホは日本球界に関連した質問の中で、「きょうは青木(宣親、現ヤクルト)さんから花束が届いてとても嬉しかった。ソフトバンクの時の仲間では柳田(悠岐)、松田(宣浩)のことがまず頭に浮かぶ。オリックスの後輩は2人、きょうサジク球場に来てくれる」と話した。

青木はイ・デホへのメッセージを、マネージメント会社を通して以下のように寄せた。

「シアトル(マリナーズ)で一緒にプレー出来たこと、オールスター休みにバンクーバーで家族で食事したこと、とてもいい思い出です。イ・デホさんの人柄が大好きです。いつか韓国に会いに行きます。長い現役生活、本当にお疲れさまでした」

15時00分(試合開始2時間前)

記者会見が終わったイ・デホは球場前広場で、サイン入りのイ・デホオリジナルキャップをファンに手渡しでプレゼント。

ファンに帽子を手渡しするイ・デホ(写真:ストライク・ゾーン)
ファンに帽子を手渡しするイ・デホ(写真:ストライク・ゾーン)

15時41分(試合開始1時間19分前)

帽子500個を渡し終えたイ・デホは再び球場の中へ。

16時35分(試合開始25分前)

これまでビジター9球場で行ってきた「引退ツアー」の締めくくりのイベントがグラウンド上で行われた。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

16時58分(試合開始2分前)

イ・デホの長女が打者、長男が投手、イ・デホが捕手を務める始球式を行い、17時試合開始。観客は満員の22,990人。ロッテの選手はイ・デホの背番号10が入った引退記念ユニフォームで試合に臨んだ。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

17時13分

1回裏イ・デホの1打席目、センターオーバーの先制タイムリー二塁打を放つ。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

17時43分

軽快な一塁の守備でファンを沸かせる。

19時23分

2打席目サードゴロ併殺打、3打席目セカンドゴロ併殺打で迎えた第4打席はショートフライ。現役最後の打席となった。この日は4打数1安打1打点。打率3割3分1厘が今季の最終成績となった。

19時28分

8回表、イ・デホはロッテの4番手投手としてマウンドへ。プロには投手として入団したイ・デホが、22年目で初めて一軍登板を果たした。LGは代打に抑え投手のコ・ウソクを送る。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

初球ストライク、2球目この日の最速の129キロをファール。3球目ボールの後、4球目が強い打球のピッチャーゴロ。これをイ・デホは軽快にさばいてアウトにした。イ・デホは再び一塁の守備に戻った。

19時58分

3-2、ロッテの勝利で試合終了。最後はサードゴロを処理した三塁手ハン・ドンヒの送球をイ・デホがつかんでゲームセットとなった。投手イ・デホに1ホールドが記録された。

20時10分

丸い月が夜空に浮かぶ中、引退セレモニーがスタート。日中より気温が5度下がるもそれを感じさせない熱気が球場を包んだ。

イ・デホの応援歌の原曲「ラヴァーズ・コンチェルト」のピアノ演奏をバックに、イ・デホへのメッセージ映像が上映される。日本からはT-岡田(オリックス)、工藤公康ソフトバンク前監督、松田宣浩からのコメントが映し出された。

T-岡田(オリックス)からのメッセージ(写真:ストライク・ゾーン)
T-岡田(オリックス)からのメッセージ(写真:ストライク・ゾーン)

松田宣浩は用意したコメント全文が韓国語だった(写真:ストライク・ゾーン)
松田宣浩は用意したコメント全文が韓国語だった(写真:ストライク・ゾーン)

20時25分

ロッテのシン・ドンビン(重光昭夫)オーナーからイ・デホ夫妻に記念品の贈呈。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

20時40分

ファンに挨拶をするイ・デホ(写真:ロッテジャイアンツ)

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

20時51分

イ・デホの背番号10はロッテ2番目の永久欠番に。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

21時9分

イ・デホの打席登場曲「オリナルダ」を歌うチェリー・フィルターがイ・デホの前で生歌唱を行った。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

21時13分

オープンカーでグラウンド一周。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

21時17分

ナインから胴上げ。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

21時20分

打ち上げ花火でフィナーレとなった。

写真:ロッテジャイアンツ
写真:ロッテジャイアンツ

KBOリーグ通算1971試合に出場、打率3割9厘、374本塁打、1425打点を記録した偉大な打者は、誰よりも愛された選手としてユニフォームを脱いだ。

(関連記事:40歳の李大浩、引退目前も首位打者争い 「まだ日本でやれる自信はある。ソフトバンクは雇ってくれる?」

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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