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韓国から帰国の日本人コーチ 「隔離ガチャ」で成田から名古屋へ。ホテルでの待機生活とは

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
成田空港(写真:ロイター/アフロ)

韓国KBOリーグに在籍した3人の日本人指導者が今季の活動を終えた。

来季から古巣中日のヘッド兼投手コーチを務める落合英二・前サムスン二軍監督と、KTの鈴木郁洋・二軍バッテリーコーチ(元オリックス)はポストシーズン、秋季キャンプ終了後の11月下旬に日本に帰国。それぞれ「新型コロナウイルス感染症に関する水際対策」による10日間の自宅待機を終えている。

しかしもう1人の日本人コーチは帰国時期を遅らせたことで思わぬ体験をした。

昼に成田到着後、夜中に愛知のホテルへ

SSGの芹澤裕二・二軍バッテリーコーチ(元楽天など)は秋季キャンプ終了後、韓国選手の結婚式に出席するため帰国を当初の予定から延期。12月5日のインチョン発、成田行きの航空券を予約した。芹澤コーチは成田到着後、10日間の待機を埼玉県の自宅で送ろうと考えていたが、12月に入って「オミクロン株に対する水際措置の強化」が決定。帰国後に検疫所が確保する宿泊施設での6日間の待機が必要になった。

5日の午後1時過ぎに成田空港に到着した芹澤コーチは、PCR検査を行い待機場所へと移動。陰性判明後に向かった先、それは成田近隣のホテルではなかった。

「インチョンを出発する時に航空会社のカウンターで、『成田の宿泊施設がいっぱいなので、名古屋(中部国際空港セントレア)に行くかもしれません』と言われていましたが、実際その通りになりました」

芹澤コーチは大荷物を手にしたまま、中部空港へと再び飛び立つことになった。

「後から来る他の便の乗客も待たなくてはいけないらしく、夜8時20分の便に乗るまでずっと待機場所にいました。レストランやコンビニには行けなかったのですが、夕方におにぎりとパンが配られたのでそれを食べました」

ほぼ満席だったという成田発の便が中部空港に着いたのは夜9時過ぎ。着陸後の手続きに時間を要し、愛知県内のビジネスホテルに着いたのは日付が変わろうかという11時半だった。

「覚悟はしていましたけど、珍道中でしたね」と芹澤コーチは笑いながら話した。

芹澤裕二コーチ(写真:SSGランダーズ)
芹澤裕二コーチ(写真:SSGランダーズ)

福岡のホテルで待機の「同士」と励まし合い過ごす

芹澤コーチによるとホテルでの待機期間のスケジュールは、朝8時に放送の合図で朝食が扉の外に支給される。メニューはおにぎり2つとヨーグルト。サンドイッチの時もあったという。昼食はお弁当。夜6時頃の夕食はお昼より少し品数の増えた幕の内弁当だったそうだ。

ホテルで用意された昼食(左)と夕食のお弁当(写真提供:芹澤裕二)
ホテルで用意された昼食(左)と夕食のお弁当(写真提供:芹澤裕二)

芹澤コーチが帰国する2日前の3日には、福岡行きの便で山本一彦(チェ・イルオン)LGインストラクターが日本に入国。芹澤コーチは福岡のホテルで待機中の同氏から、事前に待機生活のアドバイスを受けていたという。

「山本さんから『部屋では温かいものが欲しくなるから、インスタントコーヒーとカップ麺を準備した方がいい』と言われて、韓国で買って用意しましたがこれが大正解でした」

また思わぬ「おすそ分け」もあったという。

「ドアを開けて食事を入れる時にたまたま向かいの部屋のドアも開いて、そこのご夫婦からお菓子をいただきました」

芹澤コーチは昨冬と今年初め、日韓の自宅で自主隔離を経験している。しかし狭いホテルの一室から一歩も出られない日々は今回が初めてだった。

(関連記事:韓国の日本人コーチが2週間の隔離生活で困ったこととは? 全球団が韓国国内でキャンプイン 2021年2月1日)

「6日間、ずっとビジネスホテルの部屋というのは体を動かせないし、『窓を開けてはいけない』とも言われました。空気が乾燥していたので自宅の隔離とは違ってきつかったです」

「その間(福岡のホテルの)山本さんとお互いに弁当の写真を送り合って励ましたり、山本さんが『娘がホテルに差し入れした、生どら焼きとからあげクンの受け取りが認められなかった!』って怒っている話を笑って聴いていました」と芹澤コーチは振り返った。

6日間の愛知県でのホテル待機を終えた芹澤コーチは、11日に再び空路で成田へ。家族の迎えの車に乗ってようやく自宅へと戻った。現在は自宅待機中だ。

不安解消に必要な情報収集

芹澤コーチは今回の検疫所が確保する宿泊施設での待機について、「言葉がわからない外国の方だと、成田から名古屋に移動になるというのは不安だったかもしれません」と心配した。

また「僕も帰国時の流れとかがよくわかっていなかったので、YouTubeで紹介されていた動画を見て確認していました」と話した。少しでも不安を解消するには自ら情報収集することも必要なようだ。

KBOリーグのチームは例年2月、寒い韓国を離れ海外で春季キャンプ行っている。しかし今年は感染症の拡大により国内での実施となった。

「(感染症が)早く収まって来年は暖かいところでキャンプができたらいいんですけどね」

若手捕手の育成を任されている芹澤コーチはパンデミックの収束と、自由な海外往来の再開を6日間のホテル待機中に改めて願った。

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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