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選挙小屋とはなにか?日本で初の試みも【民主主義ユースフェスティバル2023】

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
2022年9月、スウェーデンにて筆者撮影

2023年4月、統一地方選挙が行われる。

しかし、各政党や候補者の話を直接聞いて、投票先を選ぶ人はどれぐらいいるだろうか。

日本では、政治家や選挙の立候補者と有権者の距離が遠く、直接「対話」する機会はほとんどない。

一方、北欧では、選挙前の約一ヶ月間、主要な各駅前に、「選挙小屋」と呼ばれる、各党の小屋(スタンド)が設置され、全ての政党に話を聞くことができる。

選挙小屋とは、選挙前に各党が駅前の広場などに出すテントのようなものだ。

そこで各党のボランティアがコーヒーやバナナなどを配りながら、国民に政策などを説明したり、質問に答える。

このように、身近に政治家に直接質問できる場所があることで、テレビで取り上げられないような、自分に直接関係のある、特に関心の強い分野について質問することができる。

大学内にも選挙小屋が設置され、政治家もキャンパス内に入って、学生と対話する
大学内にも選挙小屋が設置され、政治家もキャンパス内に入って、学生と対話する

2022年9月にスウェーデンに視察に訪れた際、スウェーデンの中学校で、「政治家に会ったことがある人はいますか?」と聞いたところ、クラスの全員が手を挙げた。

しかも、1週間前に選挙小屋に行った時に文部大臣と会ったというエピソードがたくさん出てくる。

筆者は1週間ほどしかスウェーデンにいなかったが、その選挙小屋でほとんど全党の党首に会うなど、党の幹部も時間がある時に訪れる。

そこに、中学生や高校生も訪れ、学校選挙(本物の政党を投票先にした模擬投票)の投票先を選ぶヒントにする。

また学校の宿題として、各党に同じ質問をぶつけ、各政党の特徴をまとめたりもしている。

逆に、政治家が学校を訪れることも珍しくない。

筆者が訪れた高校では、小さい体育館のようなスペースに、各政党がブースを設置し、各党のユース党員がパンフレットや飲み物、コンドームなどを配りながら、生徒からの質問に答えていた(順番にスピーチをしたりもする)。

写真撮影はNGだったが、様子はノルウェーで選挙小屋などの取り組みを紹介している鐙麻樹さんの記事がわかりやすい。

校庭で政治の話をしよう。コンドームをどうぞ。ノルウェー高校の模擬選挙「選挙広場」とは?

若者と政治家との距離感の近さが、スウェーデンの若者の投票率が高い理由だと話す中学生もいた。

「政治家は離れた存在ではなく、みんなの間にいる存在で、信頼しているから投票しようと思う」

「政治家は、首相にしても、自分たちの代表だと思っている」

「選ぶ人と選ばれる人が明確に分かれていない」し、政治家も意識的に、普通の人だと思ってもらえるために、テレビに出たりしているという。

ちなみに党幹部以外でスーツを着ている政治家は基本的にいない。

こうした信頼感があるからこそ、税金を払うことに大きな抵抗感がなく、積極的に政治にも参加している。

中学生と思われる生徒が環境党の党首に質問していた
中学生と思われる生徒が環境党の党首に質問していた

日本の政治「期待できる」20%

一方、日本では、政治家への信頼感はほとんどない。

日本財団が、2023年1〜2月に実施した18歳意識調査によると、過半数が「自分の現在または将来に関係のあることだから」などとして政治に関心を示す一方で、今の政治に「期待できる」か、の問いに「そう思う」の回答は5人に1人、残る8割は「そう思わない」と回答している。

日本財団「18歳意識調査」
日本財団「18歳意識調査」

また、政治・国会を改善する方法としては、「より多くの若手議員の選出」がもっとも多く回答されていた(35.5%)。

一方、社会課題解決や政治意見の表明に向けた「活動経験」や「活動主導」のある人は、国会議員に対し、「身近な存在である」という印象を持つ割合が高い傾向にあった。

1年以内に活動経験がある人は、国会議員を身近な存在だと思っている割合が40%を超えた一方、全体では20%程度となっている。

日本財団「18歳意識調査」
日本財団「18歳意識調査」

身近だと思っているから活動しているのか、活動したから身近だと思っているのかは、この調査ではわからないが、少なくとも、さまざまな機会を通して、政治家と話す機会が増えれば、活動に参加する人数が増える可能性は高いと言えるだろう。

日本で初の選挙小屋を実施

民主主義ユースフェスティバル2023
民主主義ユースフェスティバル2023

そして今年、日本で初めて、選挙小屋が開催される。

3月25日・26日に開催される「民主主義ユースフェスティバル2023」では、選挙小屋や若者団体のブース、パネルディスカッションなどが行われ、日本の社会課題や政治についてみんなで一緒に考えるお祭りとなっている。

選挙小屋には、全ての主要政党が参加することが決まっており、一斉に各党に話を聞くことができるようになっている。

開催概要

日時:2023年3月25日・26日(土日の2日間)11時〜20時(途中入退出可)

場所:下北線路街 空き地 東京都世田谷区北沢2-33-12

定員:会場のキャパは200名程度(2日間で計700名の見込み)

対象:若者を中心とした全世代

主催:民主主義ユースフェスティバル2023実行委員会

共催:日本若者協議会

後援:フィンランド大使館、デンマーク王国大使館、スウェーデン大使館

参加費:無料(申込不要)

コンテンツ(大枠):

①各場面での民主主義の現状を問うパネルディスカッション(学校、地域、政治、メディアなど)

②超党派の政治家と気軽に対話する場(選挙小屋)、若者団体ブース

選挙小屋参加政党:自民党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組、社民党、NHK党

③若手社会活動家を交えた、社会的課題(政治、気候変動、ジェンダー、平和など)についてのトーク

④エンタメ(ライブや飲食など)

主な登壇者:

室橋祐貴(日本若者協議会代表理事)、能條桃子(FIFTYS PROJECT代表)、たかまつなな(YouTuber)、保坂展人(世田谷区長)、岸本聡子(杉並区長)、松下玲子(武蔵野市長)、eri(アクティビスト)、小野りりあん(気候活動家)、西郷孝彦(元世田谷区立桜丘中学校校長)、津田大介(ジャーナリスト)、乙武洋匡(作家)

このような機会を通して、国民と政治家の距離が近づいていけば、もっと国民の声が届くようになり、より質の高い政治を実現できるのではないだろうか。

有権者はもちろん、まだ投票権を持っていない高校生や中学生もぜひとも参加してもらいたい。

https://democracyyouthfestival.com/

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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