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どこに相談すればいい? 子どものネット・ゲーム依存の相談先の種類と選び方を専門家が解説

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(提供:イメージマート)

子どものネット・ゲーム依存について悩んでいても、相談するタイミングが分からないという声をよくお聞きします。医療機関や地域の相談機関、民間のカウンセリングなどどこに相談すればいいのかわからない方、どういった支援を提供してくれるかが不透明だから相談しづらいという方も多いようです。ただし、「まだ相談しなくても大丈夫」と思っている間に状態が深刻化する可能性もあるため、まずは早めに相談することが大切になります。

そこで今回は、子どものネット・ゲーム依存に関する相談先について解説していきます。

どういうときに相談したらいい?

ネット・ゲーム依存には、「◯時間以上使用していたら依存」という明確な基準はありません。問題のない使用から依存的な使用まで、全てグラデーションとなっています。したがって基本的には、当事者である子どもやその家族が困っていたら、いつでも相談してよいのです。

「このままでいいのか・・・」と不安や心配な気持ちを一人で抱えていると、悩みがループしてしまい、ますます状況が複雑になってしまうこともあります。どの段階なら相談すべきか、と迷う必要はありません。

参考までに依存症のサインを以下に挙げます。

  • ゲームに夢中になっている
  • 満足を追い求めてゲームの時間がだんだん長くなっている
  • ゲームを制限したり、時間を減らしたり、やめようとしたりしても、うまくいかない
  • ゲームの時間を短くしたり、やめようとしたりしたときに、落ち込み、イライラなどを感じる
  • ゲームで大切な人間関係、学校や部活のことをおろそかにしたことがある
  • ゲームにハマっていることを隠すために、家族や先生にうそをついたことがある
  • 辛い気分を紛らわすためにゲームをする

これらの項目がいくつか当てはまる場合には、まず相談をしてみましょう。

どこに相談したらよい?

ネット・ゲーム依存の相談先としては、医療機関、各地域の精神保健福祉センターや児童相談所、民間のカウンセリング機関、当事者による自助グループ・家族会などがあります。それぞれの特徴と注意点などを紹介します。

医療機関

依存が疑われる場合、まずは専門の医療機関での受診を検討しましょう。医療機関では、薬物療法や面談、各種の心理療法(カウンセリング)を行うのが一般的です。依存症はうつ病などと同様に心の病気に分類されます。また、内科的な疾患や他の精神的な疾患が背景要因になっている場合もあるため、必要に応じて検査を受けることもできる医療機関での受診をまずお勧めします。

ただし、ネット・ゲーム依存を専門に診療できるところは全国的に数が少なく、予約を取るのに数ヶ月待つなどすぐに相談できないことも多いようです。ネット・ゲーム依存傾向にある青少年は中学生で12.4%、高校生で16%という報告(1)がある一方、専門の医療機関はわずか70数件(2)ほど。児童精神科や小児科などでもネット・ゲーム依存の診療をしているところもあるので、お近くのクリニックや病院を調べてみましょう。

専門の医療機関に行くことに抵抗があったり、診療に子ども本人を連れていくことが難しかったりという場合は、かかりつけの医師や総合病院などにまずは相談してみましょう。専門の医療機関の受診が必要かどうかを判断してくれる場合もあります。

しかしながら、医療機関によっては診療時間が数十分と短くて、十分に話ができない場合もあるようです。じっくりと話を聞いてもらいたいとか、家族の関わり方などについて具体的なアドバイスがほしいという場合は他の機関への相談も併せて検討してみてください。

地域の相談機関

各都道府県に設置されている精神保健福祉センターでも、青少年のネット・ゲーム依存の相談を受け付けています。電話や面接での相談は無料で、家族のみの相談に対応してくれるところもあります。

また、各地域の児童相談所、子ども家庭支援センターといった行政の窓口でも、相談することは可能です。必ずしもネット・ゲーム依存について専門的に対応できる職員がいるとは限らないのですが、子育てや子どもの心理面など全般的に相談できます。

もっと身近なところでは、学校のスクールカウンセラーや養護教諭にも相談して悩みを聞いてもらったり、具体的な相談先を一緒に探してもらったりするのも良いと思います。学校や家庭での様子を共有しながら、学校における支援や見守り体制を検討してもらえる可能性もあります。

民間のカウンセリング機関

民間で心理カウンセリングを提供している機関においても、ネット・ゲーム依存を専門に実施しているところがあります。医療機関に通いながら心理カウンセリングを受けることもできますし、まずは心理カウンセリングに通ってみてから医療機関の受診を検討していくことも可能です。ただし、医療機関ではないので保険適用外となることは心得ておきましょう。

心理カウンセリングでは、ネット・ゲーム依存の回復に向けた心理療法を行うことになります。臨床心理士や公認心理師といった有資格のカウンセラーが実施しているか、科学的なエビデンスに基づいた心理療法を行っているかをポイントに機関を選ぶと良いでしょう。

現時点でネット・ゲーム依存において有効性が高いとされている心理療法は、認知行動療法、家族療法などです。これらの心理療法に、動機付け面接法などを複合的に組み合わせたアプローチも効果があるといわれています(3)。ホームページなどで事前に確認することをお勧めします。

自助グループ・家族会

当事者や家族による自助グループや家族会に参加してみるのも良いでしょう。そこでは、依存症に関する勉強会や当事者や家族がそれぞれの経験を語るミーティングなどが行われています。

回復の進んだ当事者や家族からアドバイスを受けたり、同じ悩みを分かち合ったりすることで、気持ちが楽になり、生活の見通しを持つことができるかもしれません。専門機関に通いながらでも参加することができます。

お一人で抱えずに相談してみましょう

子どもの依存について、家族だけで問題を解決しようとしても、家族が疲弊していたり、不安を感じていたりすると、子どもに対して余裕を持って関わることもできなくなってしまいます。家族自身が困っている、または子どもが依存かもしれないと気づいたときは早めに相談することで、深刻な状況を防ぐことができ、気持ちも楽になるかもしれません。

〈引用文献〉

(1)尾崎 米厚ら(2018)『飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究 平成29年度報告書 分担研究報告書』

(2)独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター:インターネット依存・ゲーム障害治療施設リスト (2020版)

(3)Nakayama et al.(2017)Treatment and risk factors of Internet use disorders. Psychiatry and Clinical Neurosciences, 71(7),492-505

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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