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ジルーに見る、現代ストライカーの本質。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶジルー(写真:ロイター/アフロ)

オリヴィエ・ジルーが、アメリカに行く。今季終了時にミランを退団して、ロサンゼルス・ギャラクシーに移籍する決断を下した。

MLSは近年、補強に力を注いでいる。リオネル・メッシ、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケッツ、ルイス・スアレス、ズラタン・イブラヒモビッチ…。そのリストに、ジルーも加わる格好だ。

ジルーのキャリアは、大衆には理解しくにいものになっている。

■ジルーのキャリア

ジルーはフランス代表で131試合に出場して57得点を記録している。フランス代表の史上最多得点者だ。

フランス代表でワールドカップ優勝(2018年)、チェルシーでチャンピオンズリーグ優勝(2021年)を経験している。それにも拘らず、ディディエ・デシャン監督といった名将が評価するなか、あまり大きくクローズアップされずにきた。

顕著だったのがロシア・ワールドカップだ。ジルーは初戦のオーストラリア戦を除いて、全試合でスタメン出場した。545分のプレータイムを得て、ノーゴール。だがフランスはジュール・リメ杯を獲得している。

フランス代表で活躍したジルー
フランス代表で活躍したジルー写真:ロイター/アフロ

「ジルー症候群」の判例は、ないわけではない。

1966年のワールドカップで、イングランド代表の優勝に貢献したジミー・グリーブスは、大会を通じてノーゴールに終わっている。1998年のワールドカップでは、フランス代表のステファヌ・ギバルシュが、背番号9を背負いながら無得点で大会を後にしている。

ミランでプレーするジルー
ミランでプレーするジルー写真:ロイター/アフロ

ジルーに対する批判、それは彼のテクニック不足、そして矛盾するようだが、その連携力の高さに紐付いている。

ジルーは周りが見える選手だ。空中戦に強く、相手のセンターバックを引き付けるのが上手い。ゴール前で、あえて自分が「潰れ役」になったり、より良いポジションにいる選手にパスを出したり、得点ではないプレーを選択する。ゆえに、ジルー自身のゴールが積み重なっていかない。

それでも、ジルーはフランス代表でティエリ・アンリ(51得点)、キリアン・エムバペ(46得点)、アントワーヌ・グリーズマン(44得点)、ミシェル・プラティニ(41)よりゴールを挙げている。

エムバペに抜かれるのは時間の問題かも知れないが、アンリ、プラティニ以上のゴール数というのは、誇れる実績だろう。

■現代のストライカー

近代フットボールにおいて、「フェルソ・ヌエベ」という戦術の普及、また、それに伴うようにモビリティのあるFWが重宝される傾向が強まっている。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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