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なぜエムバペの“移籍騒動”は終わらないのか?レアルの獲得の可能性とパリSGの本音。

森田泰史スポーツライター
去就に注目が集まるエムバペ(写真:ロイター/アフロ)

永遠に終わらないストーリー、なのかも知れない。

2024年の冬の移籍市場が閉幕した。この冬、注目されたのがキリアン・エムバペの去就だ。だが最終的に移籍実現には至らなかった。

■エムバペの意思とパリのプラン

エムバペは2022年夏にパリ・サンジェルマンと契約延長を行った。その際、2年+1年延長オプションでサインしたが、次の夏に契約満了の時期を迎える。

フランス『パリジャン』によれば、エムバペにパリSGでプレー続行する意思はないという。となれば、当然、移籍の可能性が高まる。そして、水平線にはレアル・マドリーがいる。

得点を喜ぶラモスとエムバペ
得点を喜ぶラモスとエムバペ写真:ロイター/アフロ

パリSGは今夏、ネイマールとリオネル・メッシが退団。そして、“エムバペ仕様”のチームをつくるため、補強を行った。

ランダル・コロ・ムアニ(移籍金9500万ユーロ/約142億円)、ゴンサロ・ラモス(6500万ユーロ/約97億円)、ウスマン・デンベレ(5000万ユーロ/約75億円)、ブラッドリー・バルコア(4500万ユーロ/約67億円)、ウーゴ・エキチケ(2850万ユーロ/約42億円)、イ・ガンイン(2200万ユーロ/約33億円)、マルコ・アセンシオ(フリートランスファー)…。複数選手を確保して、チームビルディングを進めた。

イ・ガンインら新戦力が到着
イ・ガンインら新戦力が到着写真:ロイター/アフロ

一方で、パリSGは「プランB」を用意してもいる。

今夏、3億550万ユーロ(約455億円)の補強費で、7人のアタッカーを引き入れたパリSGだが、彼らはいずれも若い。エキチケ(21歳)、バルコア(21歳)、イガンイン(22歳)、ラモス(22歳)、コロ・ムアニ(25歳)、デンベレ(26歳)、アセンシオ(28歳)と30歳以下の選手たちだ。

これは世代交代を推し進める上で重要だ。また、ポスト・エムバペ時代の対策にもなり得る。

加えて、パリSGはエムバペの代役を探そうとしている。ラファエル・レオン(ミラン)、マーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド)、ビクトール・オシムヘン(ナポリ)らが候補に挙げられており、オシムヘンに関してはナポリのデ・ラウレンティス会長が「我々の契約延長交渉は長引いた。友人同士の会話だったし、レアル・マドリーやパリ・サンジェルマン、あるいはイングランドのクラブにシーズン終了時に移籍するだろうと分かっていたためだ」と発言するに至っている。

■レアル・マドリーの思惑

一方、マドリーは、エムバペの状況を静観している。

大きかったのは、ジュード・ベリンガムの獲得と素早い適応だ。この夏、移籍金固定額1億500万ユーロ(約155億円)でマドリーに加入したベリンガムであるが、ここまで公式戦27試合18得点(リーガエスパニョーラ第22節終了時点)と大活躍している。

マドリーは現在、ベリンガム、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエスを攻撃に中心に据えている。そこにエムバペを嵌める、というのは夢こそあるが、現実的かどうかは別問題だ。

移籍一年目から活躍するベリンガム
移籍一年目から活躍するベリンガム写真:ムツ・カワモリ/アフロ

また、スペインでは、ラ・リーガのサラリーキャップの問題がある。フロレンティーノ・ペレス会長の下、健全経営を行っているマドリーだが、とはいえスター選手が来るたびに法外なサラリーを準備できるわけではない。

エムバペは、パリSGで年俸7000万ユーロ(約105億円)を受け取っていると言われている。マドリーでは、その額は3000万ユーロ(約45億円)程度になるとされている。

■獲得へのチャレンジ

マドリーは、この数年、エムバペの獲得にチャレンジしてきた。2021年夏には、移籍金2億ユーロ(約300億円)を拵(こしら)えた。2022年夏には、フリートランスファーの移籍で、選手の意思がマドリー行きにあると確信していた。

エムバペがパリ残留を決断した一方で、マドリーはベリンガムが覚醒して新たな攻撃陣を形成している。しかし、先日、スペイン『マルカ』が行ったアンケートでは、「次のシーズンに向け、マドリーがエムバペを獲得するべきか」の問いに、5万29票の投票数で59%が「イエス」と答えている。

ベリンガムとヴィニシウス
ベリンガムとヴィニシウス写真:ロイター/アフロ

エムバペの移籍を巡っては、幾度となく振り回されてきた。

だがマドリーはスタンスを変えていない。破格のオファーは考えておらず、スポーツ的側面・経営的側面を顧みて、メリットがあれば獲得に動く。他方で、先述のように、少なくないマドリディスタがエムバペの加入を望んでいる。終わらない物語の結末が、一時的であれ半年後に迫っている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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