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なぜS・ラモスはセビージャ復帰を果たしたのか?カンテラーノの18年ぶりの帰還の舞台裏。

森田泰史スポーツライター
セビージャに復帰したセルヒオ・ラモス(写真:ロイター/アフロ)

待ちに待った、復帰だった。

移籍のマーケットが閉じた直後、朗報が届いた。昨季終了時にパリ・サンジェルマンとの契約が満了したセルヒオ・ラモスだが、フリーの身になり、新天地を探していた。

最終的にセビージャからオファーが届き、セルヒオ・ラモスの古巣復帰が決定している。

■セビージャのカンテラで育った男

セルヒオ・ラモスはセビージャのカンテラ(下部組織)出身選手だ。2005年にレアル・マドリーに移籍して以来、18年ぶりの復帰となる。

だがセビージャはセルヒオ・ラモスの獲得を躊躇(ちゅうちょ)していた。それには理由があった。

2016−17シーズン、コパ・デル・レイのラウンド16、レアル・マドリーとセビージャが激突した。そのセカンドレグ、セビージャの本拠地サンチェス・ピスファンで、セルヒオ・ラモスはPKで得点を記録。自身の背番号と名前を指し示し、手を耳に当てるジェスチャーでサポーターを煽るような行為をした。

2017年1月のセビージャ戦でのジェスチャーが物議
2017年1月のセビージャ戦でのジェスチャーが物議写真:ロイター/アフロ

セビジスタはセルヒオ・ラモスの加入を歓迎していなかった。少なくとも、一部のサポーターは彼を毛嫌いしていた。

また、クラブ内でもセルヒオ・ラモスの獲得に賛成する者は少なかった。ビクトール・オルタSD(スポーツディレクター)が「6人のセンターバックが揃っている」と述べ、ホセ・カストロ会長は「私が欲しいのは飛行機だ」と語っていた。

今季のUEFAスーパー杯ではシティと対戦
今季のUEFAスーパー杯ではシティと対戦写真:ロイター/アフロ

しかしながら、シーズン開幕から不振に喘いでいたチームで、状況が変わった。3戦3敗で最下位に位置するシチュエーションで、ホセ・ルイス・メンディリバル監督はセンターバックの補強を要望した。

確かに、セビージャにはタンギ・ニアンズ、マウコン、ネマニャ・グデリ、キケ・サラス、フェデリコ・ガットーニ、ロイグ・バデとCBの選手が多くいる。だがニアンズとマウコンは負傷中で、グデリの本職はボランチだ。カンテラーノのサラスは若く経験不足で、ガットーニに関してはモンチ前SDが獲得を推薦した選手であり、メンディリバル監督の信頼を勝ち取るには至っていない。実質、戦力として数えられるのはバデのみだった。

加えて、セビージャはこの夏にGKヤシン・ボノを放出している。移籍金1900万ユーロ(約29億円)で、アル・ヒラルへの移籍が決定。守備が不安定な状態が続いていた。

■賛否両論の移籍

かくして、セビージャはセルヒオ・ラモスの獲得を決断した。一部サポーター(ビリス・ノルテ/セビージャのウルトラス)からはすでに反発が起こっている。

ただ、反発ばかりではない。セルヒオ・ラモスの入団会見には、2万2000人以上のサポーターが、駆けつけた。

多くのサポーターが入団会見に
多くのサポーターが入団会見に写真:ロイター/アフロ

「セビージャに到着してから、セビジスモの愛情をすごく感じているよ。一人の人間として、彼らに感謝を伝えたい。自分の良くないジェスチャーで、気分を害したサポーターの人たちに対しては、その過ちを認めて謝罪したい。若い時は間違いを犯してしまうもの。彼らが許してくれることを願っている。今は、このエンブレムを守るために戦いたい。彼らの意見を変えるために、プレーとゴールで勝利に貢献したい。僕たちは皆、同じ船に乗っているんだ」

「セビージャに戻るという選択肢が出てきた時、心がとても大きく動いた。ひとつのサイクルを終えて、夢を叶えられると思った。死ぬ前に、心のクラブであるセビージャで、タイトルを勝ち取りたい」

セビージャでトップデビューを果たしたセルヒオ・ラモス
セビージャでトップデビューを果たしたセルヒオ・ラモス写真:ロイター/アフロ

セルヒオ・ラモスには、パリ・サンジェルマンから契約延長の打診があった。また、サウジアラビアのアル・イテハドから年俸2000万ユーロ(約36億円)のオファーを受け取っていたと言われている。

だがセルヒオ・ラモスはセビージャへの復帰を決めた。ヘスス・ナバスやイバン・ラキティッチのように、復帰してタイトルを獲得できるかーー。批判を称賛に変えてきた男が、新たな挑戦へと向かう。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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