Yahoo!ニュース

なぜ久保建英はソシエダで“居場所”を確保できたのか?ウーデゴールのケースとイマノル監督の手腕。

森田泰史スポーツライター
ボールを追う久保(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

今シーズン、戴冠の可能性を残している。

レアル・ソシエダが好調を維持している。先のリーガエスパニョーラ第19節、敵地サンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリーと対戦。0−0でアウェーから勝点1を持ち帰った。

コパ・デル・レイではベスト8でバルセロナに敗れて敗退したが、ソシエダはヨーロッパリーグでベスト16に進出している。リーガにおいては3位に位置しており、来季のチャンピオンズリーグ出場権獲得が現実味を帯びてきている。

■指揮官の手腕

ソシエダの躍進の背景には、イマノル・アルグアシル監督という指揮官の存在がある。

ソシエダは育成に定評のあるクラブだ。カンテラ(下部組織)が充実している。近年においても、マルティン・スビメンディ、ロビン・ル・ノルマン、アリツ・エルストンド、イゴール・スベルディアといった優秀な選手を輩出してきた。

イマノル監督は、そういったカンテラ出身の選手を重用してきた。なおかつ、補強で加わった選手を色眼鏡で判断せず、戦力を整えて試合に勝つチームを作ってきた。

得点を喜ぶソシエダの選手たち
得点を喜ぶソシエダの選手たち写真:ムツ・カワモリ/アフロ

イマノル監督の下、ソシエダで「再生」した選手は多くいる。顕著な例が、マルティン・ウーデゴールだ。現在、アーセナルで大活躍しているウーデゴールだが、一時、自身のキャリアで伸び悩んでいた。

ウーデゴールは16歳でレアル・マドリーのカンテラに入団。ノルウェーの「神童」と持て囃され、大きな期待を背負っていた。しかしながらマドリーではトップ定着できず、フィテッセ、ヘーレンフェーンへのレンタル移籍を経て、2019年夏にソシエダに加入。そこで萌芽の時を迎えた。

ソシエダ時代のウーデゴールとマジョルカ時代の久保
ソシエダ時代のウーデゴールとマジョルカ時代の久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

「イマノル監督とは良いコミュニケーションが取れている。素晴らしい監督で、移籍した初日から僕をサポートしてくれた。毎日、何かしら彼から学んでいる」とはソシエダでプレーしていた頃のウーデゴールの言葉だ。

2019−20シーズン、ウーデゴールはソシエダで公式戦36試合7得点9アシストを記録。ソシエダのコパ・デル・レイ決勝進出、欧州カップ戦出場権獲得に大きく貢献した。

■久保のソシエダ移籍の決断

そして、この夏、久保がソシエダに到着した。

マジョルカ、ヘタフェ、ビジャレアルと複数クラブを渡り歩いてきた久保だが、思ったようなインパクトは残せなかった。そういう意味では、ウーデゴールのケースと似ている。

自分のプレースタイルに合ったクラブだった。久保自身が認めるように、ソシエダのスタイルと久保の特徴は合致していた。

だがそれだけではない。イマノル監督は久保を2トップの一角で起用。【4−4−2】の中盤ダイヤモンド型で、スルロットと久保が前線に据えられた。サイドでのアップダウン、守備負担が減り、久保が得意なプレーを出せるようになった。

ソシエダ移籍当初、久保が2トップで使われると予想していた者は少なかっただろう。

久保は今季、公式戦23試合3得点5アシストを記録。本人が手応えを感じている通り、充実のシーズンを過ごしている。

久保に指示を送るイマノル監督
久保に指示を送るイマノル監督写真:なかしまだいすけ/アフロ

ソシエダは今夏、積極的な補強を行った。久保、ブライス・メンデス、モハメド・アリ・ショー、ウマル・サディク、アレクサンダー・スルロットを獲得。ラ・リーガで上位を争うための陣容を整えた。

前述のように、イマノル監督は新戦力とカンテラーノをうまく融合させている。久保だけではなく、B・メンデス、スルロット(レンタル2年目)といった選手たちが、今季のソシエダの躍進を支えている。

今季のラ・リーガは、バルセロナとレアル・マドリーの「2強」が優勝を争う展開になっている。一方で、アトレティコ・マドリー、セビージャ、この数年、トップ4を堅持していたチームが失速している。ソシエダが戴冠、あるいはチャンピオンズリーグ出場権を獲得する可能性は十分にある。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事