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久保建英がソシエダで活躍している理由。D・シルバとの連携と中盤4枚の機能性。

森田泰史スポーツライター
ダービーマッチでゴールを決めた久保(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

久保建英が、好調だ。

リーガエスパニョーラ第17節、レアル・ソシエダは本拠地アノエタにアトレティック・クルブを迎えた。バスク・ダービーの一戦で、久保は1得点を挙げ、なおかつPK獲得と相手のレッドカードを誘発させるプレーでチームの3−1の勝利に貢献した。

サディクと久保
サディクと久保写真:ムツ・カワモリ/アフロ

久保は今夏、レアル・マドリーからレアル・ソシエダに移籍。ここまでリーガエスパニョーラ14試合に出場して2得点2アシストを記録している。

■ストライカーの移籍

この夏、ソシエダはアレクサンダー・イサクを放出した。ニューカッスルから移籍金7000万ユーロ(約98億円)のオファーが届き、ソシエダ側としては移籍を容認せざるを得なかった。

ソシエダはイサクの代役としてアルメリアからウマル・サディクを獲得。だがサディクがアトレティコ・マドリー戦で負傷して長期離脱を余儀なくされ、イマノル・アルグアシル監督はプランの再考を強いられた。

新加入のブライス・メンデスと久保
新加入のブライス・メンデスと久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

イマノル監督が選んだのは、久保とアレクサンダー・スルロットの2トップだった。

ソシエダは現在、【4−4−2】を基本布陣としている。久保とスルロットを前線に据え、中盤にダビド・シルバ、ブライス・メンデス、ミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディが構える形だ。

ソシエダのミドルゾーンは「黄金の中盤」である。37歳を迎えているD・シルバが攻撃を操り、ブライスがゴールで、メリーノがアシストで貢献する。そして、中盤の底ではスビメンディがボールを回収するべく常に目を光らせている。

中盤の4枚はソシエダの生命線だ。このカルテットが機能している限り、ソシエダは大崩れしない。

■前線と中盤の連携

そのようなチーム状況で、久保またスルロットにとって重要なのは、その中盤の選手たちとの関係だ。

「タケはシルバと理解し合っている。彼らは素晴らしい選手だから、それが可能になっている。さらに、ブライスやメリーノがピッチ上にいることで、パスのレシーブやコンビネーションが非常に簡単になっている」とはイマノル監督の言葉だ。

「タケはシーズンを通じて良いプレーをしている。私は彼の守備面でのコミットメントを評価したい。ファーストシーズンで、我々のフットボールを理解して、フィットした。このユニフォームでプレーする意味をね。クオリティはすでに備えていたし、良い選手であるのは間違いなかった」

イマノル監督と久保
イマノル監督と久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

また指揮官が語るように大事なのは久保の守備面での貢献だ。

久保は2トップの一角として、プレスのスイッチャーになる。スルロットと連動しながら、相手がビルドアップを試みるところで、パスコースに限定をかける。

そしてソシエダはトップ下のD・シルバが前線からのプレスに参加する。「2トップ+トップ下」の3枚プレスでボールの出所を塞ぐ。苦し紛れに出させたパスあるいは無碍に蹴られたロングボールを中盤かディフェンスラインで奪う。そのチームとしての機能性は高い。

ダービー戦でゴールのオジャルサバル
ダービー戦でゴールのオジャルサバル写真:なかしまだいすけ/アフロ

ソシエダは現在、リーガで暫定3位につけている。

加えて先日、イマノル監督とレアリスタに朗報が届けられた。ミケル・オジャルサバルが復帰したのだ。

カンテラ出身のオジャルサバルは、ソシエダの象徴的存在であり、大エースだ。ひざの負傷で長く戦列を離れていたが、先のオサスナ戦でピッチに戻ってきた。

オジャルサバルの復帰で、ソシエダは再び前線のポジション争いが活性化するだろう。システムに関しても、【4−4−2】から【4−3−3】への再変更があるかもしれない。その時、久保がどのポジションで、ソシエダがどのようなフットボールを展開するのかーー。我々の興味は、尽きない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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