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なぜ森保ジャパンはドイツを倒せたのか?浅野、三笘、堂安の躍動と歴史的な勝利をもたらした布陣変更。

森田泰史スポーツライター
ドイツに勝利した日本(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

大事な、初戦だった。

日本代表はカタール・ワールドカップのグループE初戦でドイツ代表と対戦した。2−1で勝利を収め、森保ジャパンは白星発進した。

同点ゴールを喜ぶ蒲田と堂安
同点ゴールを喜ぶ蒲田と堂安写真:ロイター/アフロ

ドイツにとって、今大会は雪辱の舞台だった。前回のロシアW杯では、まさかのグループ敗退に終わった。その失敗から教訓を得て、「ゲルマン魂」を燃やしていた。

一方、日本は前回の大会でベスト16に進出。その大会でコーチングスタッフとして入閣していた森保一監督が指揮官のポストに就き、準備と積み上げの期間を経てカタールに乗り込んだ。

■嵌まらなかったプレス

キックオフの笛が鳴り、日本は前線から積極的にプレッシングを掛ける。CFの前田大然をプレスの先鋒にして、サイドに追い込むようにボールを誘導。ドイツの自由を奪うべく、ハードワークを行った。森保監督は9月のインターナショナルウィークで【4−2−3−1】に布陣を変更していた。それは前からのプレスを「嵌めやすく」するためだった。

だが、この試合の序盤ではそれが裏目に出た。ドイツが【4−2−3−1】と同じシステムを敷き、噛み合わせが悪かった。またドイツがビルドアップの形を複数用意していたために、日本のプレスが的を絞れなかった。

2枚のセンターバックとサイドバックが協働する形とボランチが降りてくる形で、ドイツは3枚でのビルドアップを行った。守備時に【4−4−2】を形成した日本は後手を踏み、相手のボールの前進を許していた。

そして前半32分、GK権田修一がPKを献上し、それをイルカイ・ギュンドアンに決められてドイツに先制を許した。

■システムチェンジの効果

森保監督は後半から布陣を変更した。久保建英に代えて冨安健洋を投入して、5バックの布陣を敷いた。

日本は冨安が入り、5バックにしたことで守備が安定した。また、無理に前からボールを追うのではなく、自陣に構えてカウンターを狙うスタイルに切り替え、無駄走りを抑えた。さらに後半の途中から長友佑都と前田に代えて三笘薫、浅野拓磨を投入。フレッシュな選手を入れて攻撃の活性化を図った。

とりわけ三笘の存在は大きかった。スピードとテクニックに優れ、左サイドで起点になれる。彼がピッチに入り、攻撃に推進力がもたらされた。

終盤には、堂安律、南野拓実がピッチに入った。日本が畳み掛けるようにドイツのゴールに襲いかかった。

勝利を喜ぶ日本代表の選手たち
勝利を喜ぶ日本代表の選手たち写真:ロイター/アフロ

サイドに2枚置く。右サイドでも、左サイドでも、それは機能した。特に左サイドでは、三笘と南野の連携が効いた。

相手の右SB(ズーレ)の裏のスペースを突く。ここからの突破とアイデアで、同点弾は生まれた。その時にも、左サイドから伊東と堂安の2枚がしっかりとゴール前に詰めていた。

同点ゴールのシーン
同点ゴールのシーン

同点ゴールのシーン
同点ゴールのシーン

1点を奪い、日本は勢いづいた。最後はカウンターから浅野が飛び出し、スーパーゴール。独力でシュートをねじ込み、日本が逆転に成功した。

浅野の決勝ゴール
浅野の決勝ゴール写真:ロイター/アフロ

森保ジャパンはドイツを破った。

それは歴史的な勝利だった。今大会で、サウジアラビアのアルゼンチン撃破に並ぶ、サプライズだった。

だがグループ突破が決まったわけではない。コスタリカ、スペインに敗れては、何の意味もない。森保一監督が試合後に語ったように、一喜一憂するのではなく、次のコスタリカ戦に向けて再び準備に専念すべきだ。

※文中の図は全て筆者作成

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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