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バルサの「右SB問題」と3バックの可能性。「CB型」のサイド起用と「左ズレ」

森田泰史スポーツライター
シュートを打つデンベレ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

時を少し遡る。2019年夏の話だ。セビージャが、ジュール・クンデ獲得に動いていた。

移籍金2500万ユーロをボルドーに支払い、クンデの獲得を決めたセビージャだが、入団会見の際にスポーツディレクターのモンチに質問が飛んだ。あまりに高額な移籍金ではないか、という問いだ。

これに対するモンチの答えは「数年以内に分かるだろう」というものだった。それから3年が経ち、今夏、バルセロナが移籍金固定額5000万ユーロ+ボーナス1000万ユーロでクンデを引き入れた。セビージャにとって、クラブレコードの移籍金だった。

競り合うアブデとクンデ
競り合うアブデとクンデ写真:ロイター/アフロ

かくして、バルセロナはクンデの獲得を決断した。

となると、問題はクンデの起用法だ。個人的には、プレシーズンでのバルセロナひいてはシャビ・エルナンデス監督の右サイドバックの使い方が気になった。なので、それと絡めて戦術的に紐解いていきたい。

■CB型のサイド起用

ロナウド・アラウホ、セルジーニョ・デスト、セルジ・ロベルトが今季のバルセロナの右サイドバックの選手の候補だ。

昨季から、シャビ監督は度々、アラウホを右SBで起用している。この起用法を見る限り、バルセロナの指揮官がクンデを右SBで使う可能性は十分に考えられる。

つまり、CB型の選手をサイドに配置するのだ。

当然、本職がセンターバックの選手なので、守備の強度は担保される。

ただ、この場合の課題は、ビルドアップの力が落ちることだ。

提唱したいのは、「左ズレ」である。例えば、アラウホ、アンドレアス・クリステンセン、エリック・ガルシアで最終ラインを形成する。ジョルディ・アルバが上がり、左肩上がりのシステムにする。

(左ズレと3ー4ー3)

そして、この時、右インサイドハーフがサイドに流れるべきである。本来であれば、そういったプレーに適性のある選手が望ましい。ファビアン・ルイス、ベルナルド・シウバのような選手だ。しかし、現状では、ガビやニコ・ゴンサレスにそのタスクを与えることになる。

(右IHのサイド落ち)

右インサイドハーフがサイドに流れる。すると、「花道」が空く。右ウィング(ラフィーニャ/ウスマン・デンベレ)がハーフスペースに入ってくる。縦パスが入れば、攻撃のギアが一気に上がる。

(WGのハーフスペースイン)

そこから3人目や4人目の動きで崩す、というパターンに繋げられたら、なお良いだろう。

(3人目と4人目の動き)

■3バックのオプション

もうひとつ、考えたいのが、3バックのオプションだ。

クンデの起用、さらには後釜が見つからないセルヒオ・ブスケッツに休養を与えるためにも、このオプションは有効になると見る。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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