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なぜC・ロナウドは移籍しなかったのか?バイエルン、アトレティコ、パリSG...それぞれの思惑。

森田泰史スポーツライター
ユナイテッドでプレーするC・ロナウド(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

サプライズ移籍は、成立しなかった。

この夏、世間を賑わせていたのがクリスティアーノ・ロナウドの去就だ。C・ロナウドは昨年夏、ユヴェントスからマンチェスター・ユナイテッドに移籍。恩師サー・アレックス・ファーガソンに請われる格好で、本拠地オールド・トラフォードへの帰還を決めた。

だが一年で状況は変わった。

■揺れ動いた心

ユナイテッドは昨季、プレミアリーグを6位でフィニッシュ。チャンピオンズリーグの出場権を逃した。

これがC・ロナウドの心を揺さぶった。カタール・ワールカップ開催が控える中、ポルトガル代表のエースとしては、欧州最高峰の大会でプレーしたい。ゆえにジョルジュ・メンデス代理人を通じて、チームを探していた。

レアル・マドリー時代のC・ロナウド
レアル・マドリー時代のC・ロナウド写真:ロイター/アフロ

バイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマン、チェルシー、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー...。複数クラブが候補に挙がっていた。

バイエルンは早い段階でオリバー・カーンCEOが「我々のフィロソフィーに合わない」と獲得を断念した。「クリスティアーノをとてもリスペクトしている」と前置きした上で、ユナイテッドの7番を引き入れる意思はないと明言した。

パリSGは今夏、マウリシオ・ポチェッティーノ前監督、レオナルド前SD(スポーツディレクター)が去り、変化の時を迎えている。クリストファー・ガルティエ監督と補強担当のルイス・カンポス氏の考えに、C・ロナウドのようなスター選手の獲得は当て嵌まらなかった。

パリSG移籍ならメッシと共存の可能性があった
パリSG移籍ならメッシと共存の可能性があった写真:ロイター/アフロ

チェルシーは、アタッカーで狙っていたのはラヒーム・スターリングやラフィーニャ(現バルセロナ)だった。また、アントニオ・リュディガー(レアル・マドリー)、アンドレアス・クリステンセン(バルセロナ)の退団があり、守備陣の補強を検討していた。

マドリーはこの夏、リュディガーとオウリエン・チュアメニを獲得して補強を終えた。欧州王者は余剰戦力の売却に集中していて、絶対的なエースとして君臨した男の復帰はまったく考えていなかった。

指示を送るチェルシーのトゥヘル監督
指示を送るチェルシーのトゥヘル監督写真:ロイター/アフロ

そして、最後に現れたのがアトレティコである。

アトレティコは昨季終了時にルイス・スアレスが退団した。アクセル・ヴィツェル、ナウヘル・モリーナを獲得したが、前線の補強は敢行していない。

一時はアントワーヌ・グリーズマンとのトレード話まで浮上した。だがプレシーズンマッチのヌマンシア戦でアトレティコのサポーターが「クリスティアーノ・ロナウドを歓迎していない」という横断幕を出して、エンリケ・セレソ会長が「補強は終わり」と宣言し、移籍の可能性が消滅した。

競り合うサヴィッチとC・ロナウド
競り合うサヴィッチとC・ロナウド写真:ロイター/アフロ

「僕が話題にならない日はない。それは不可能だ。メディアにとって、それではお金にならない。嘘をつかなければ、彼らは人々の注意を引き付けられない」

「そういう風に続ければいい。いつか、当たる時があるだろう」

これはC・ロナウドの言葉だ。その後、ソーシャルメディア上で「日曜日にプレーする」と明かして、実質的に残留が決定した。

ユナイテッド残留が決定
ユナイテッド残留が決定写真:ムツ・カワモリ/アフロ

C・ロナウドはキャリア通算で公式戦928試合692得点を記録している。

C・ロナウドは来年2月に38歳になる。推定年俸3000万ユーロという高額なサラリーも、負担になる。それぞれの思惑が絡み合い、C・ロナウドの残留が決まっている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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