Yahoo!ニュース

レアル・マドリーとS・ラモスの「契約延長問題」はどうなる?待たれる主将の決断とコロナ禍の財政事情。

森田泰史スポーツライター
マドリーで主将を務めるセルヒオ・ラモス(写真:ロイター/アフロ)

この夏、世間を賑わせたのがリオネル・メッシの退団騒動だ。

バルセロナとの契約を2021年夏までとしているメッシが、退団の希望を申し出たのはショッキングな出来事だった。最終的にはジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長が契約解除金7億ユーロ(約840億円)の支払いがない限り移籍は容認しないという姿勢を貫き、メッシが翻意して残留が決まった。

だが、来年の夏に契約満了を迎えるのはメッシだけではない。現在、スペインで注目を集めているのがレアル・マドリーとセルヒオ・ラモスの契約延長の行方だ。今夏、多くのカンテラーノを放出したマドリーにとって、ラモスを繋ぎ止められるかどうかは大きなポイントになる。

■過去にはマンチェスター・ユナイテッドが強い関心

マドリーがラモスを獲得したのは、2005年夏だ。契約解除金2700万ユーロ(約32億円)を支払い、セビージャからラモスを引き入れた。当初はミチェル・サルガドの後継者として彼に白羽の矢を立てていた。

そのラモスがマドリー退団に近づいていたのは、2015年夏のことだ。マンチェスター・ユナイテッドがラモスに強い関心を示していた。リオ・ファーディナンド、ネマニャ・ヴィディッチの後釜を探していたユナイテッドはルイ・ファン・ハール監督の下でラモスをセンターバックに組み込む算段だった。年俸1100万ユーロ(約13億円)の5年契約という破格のオファーを準備していたといわれている。

ラモスの心は揺れていた。だがマドリーは彼を放出するわけにはいかなかった。その夏、イケル・カシージャスがポルトに移籍したからだ。主将クラスの選手を一気に2人放出しては、マドリディスタの信頼を失うことになる。そう判断したフロレンティーノ・ペレス会長はラモスの説得を試みて、両者は5年の契約延長で合意した。

■契約延長の障害

今回の契約延長に際して、マドリーとラモスの障害になっているものがある。

まず、新型コロナウィルスの影響で、クラブの財政が厳しくなっている。選手たちのサラリーへの打撃は避けられない。マドリーの場合、選手とスタッフの総年俸上限額は6億4100万ユーロ(約769億円/2019-20シーズン)から4億6850万ユーロ(約562億円/2020-21シーズン)に減っている。

そのような状況で、ラモスに大型契約を提示するのは難しい。ラモスの年俸1200万ユーロ(約14億円)の工面、そして2年以上の複数年契約をオファーできるかが一つのポイントになりそうだ。

パリ・サンジェルマンがラモスを狙っているようだ。この夏、チアゴ・シウバがチェルシーに移籍したパリSGはセンターバックの補強を検討している。ラモスに年俸2000万ユーロ(約24億円)の3年契約を用意しているという。来夏、フリートランスファーでラモスを獲得できるなら、十分に賄えるという考えだ。

マドリーとしては、年内中にラモスとの交渉をまとめたいところだろう。年が明けると契約期間が半年を切り、他クラブとの自由交渉が可能になる。ラモスはマドリーで660試合に出場して101得点を記録している。ラウール・ゴンサレス(741試合)超えも不可能ではない。主将の決断に、全世界のマドリディスタが注目している。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事