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バルサはメッシと相性抜群のビダルを手放してしまうのか…「キング」を残留させるべき理由とは?

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶビダルとメッシ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

冬の移籍市場が開き、各クラブの駆け引きが本格的に始まった。バルセロナは、アルトゥーロ・ビダルの去就が不透明となっている。

2018年夏、パウリーニョの移籍金5000万ユーロ(約60億円)での中国の広州恒大への移籍が決定した。エルネスト・バルベルデ監督が、パウリーニョの代役として獲得を要望したのがビダルであった。

■ビダルの必要性

バルベルデ監督にとって、ビダルは必要な選手だった。

だがビダルはより多くの出場機会を欲していた。また、この移籍市場が開くタイミングでバルセロナとビダルの「意見の食い違い」が露呈した。ビダル側は、昨季の240万ユーロ(約3億円)のボーナスが支払われていないと主張。バルセロナ側は、ビダルがボーナスの条件を満たしていなかったとみている。

加えて、インテルのビダルへの関心が取りざたされている。ビダルの獲得を望むアントニオ・コンテ監督のため、インテルが移籍金1200万ユーロを準備して獲得に乗り出そうとしているというのだ。

バルセロナは、この冬にカルレス・アレニャを今季終了時までのレンタルでベティスに放出した。バルセロナBでプレーを続けているリキ・プッチにはトップに昇格する気配がない。ビダルの重宝は、ともすればカンテラーノの成長に蓋をすることに繋がってしまう。

■重宝されるハードワーカー

そして、中盤にフィジカルベースの高い選手を起用する戦い方は、バルセロナのフィロソフィーに合致しない。そのため、ビダルやパウリーニョに信頼を示してきたバルベルデ監督に対しては、幾度となく批判の声が上がってきた。

それでもバルベルデ監督はビダルを貴重な戦力として扱ってきた。ビダルは今季、リーガエスパニョーラで15試合に出場して6得点を記録している。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、アントワーヌ・グリーズマンに次いで、チーム4番目のゴールスコアラーとなっている。

この勢いを持続すれば、今季ビダルが二桁得点を記録する可能性は十分にある。セスク・ファブレガス(2012-13シーズン/11得点)、シャビ・エルナンデス(2011-12シーズン/10得点)を上回るかもしれない。

現在のバルセロナで、メッシとスアレスが献身的に守備をするというのは考えにくい。その分、働くのがビダルだ。その強面(こわもて)からは想像がつかないほどに、ピッチ上での彼は味方のポジションを見ながら、自身の位置取りを細かく修正して、チームのために走っている。

■「MSG」との相性

メッシ、スアレス、グリーズマンとビダルの相性は抜群だ。ビダルのリーガの得点のうち、66%が、「MSG」からのアシストで成り立っている。

また、チャンピオンズリーグ・グループステージ第2節インテル戦で、バルベルデ監督は1点ビハインドの状況でセルヒオ・ブスケッツに代えてビダルを投入した。4-2-3-1へのシステムチェンジと、トップ下・ビダルを生かして前線からのプレスを強化。その策がはまり、2得点を奪取して逆転に成功した。

バルベルデ監督が「修正力」を存分に発揮するために、不可欠な選手がビダルなのである。

今季、バルセロナの中盤で、安定したプレーを見せているのはフレンキー・デ・ヨングのみだ。プレータイムを減らすブスケッツ、今季序盤戦で出場機会を得られなかったイバン・ラキティッチ、恥骨付近に痛みを抱えコンディションが万全ではないアルトゥール・メロ...。バルベルデ監督は疑念を拭えずにいる。

「キング」の異名を取る男を、バルセロナが手放したとしたらーー。タイトル獲得からは、遠ざかることになるかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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