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ラキティッチがもたらす「中盤の規律」…バルベルデを陰で支える立役者

森田泰史スポーツライター
ドリブルするラキティッチ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

タイトル獲得に必要な選手というのが、いる。現在のバルセロナにとって、それはイバン・ラキティッチだろう。この夏、ラキティッチは「交換材料」として扱われた。ネイマールの再獲得に動いていたジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、移籍金を引き下げる目的で選手譲渡をオペレーションに含めようとしていた。その候補の一人が、ラキティッチだった。

エルネスト・バルベルデ監督は、リーガエスパニョーラ開幕から3試合連続でラキティッチをスタメンから外した。昨季、リーガ34試合に出場(出場時間2643分)して、セルヒオ・ブスケッツに次ぐ出場機会を得ていた選手を、である。

■中盤の競争

フレンキー・デ・ヨングの加入、アルトゥール・メロの成長で、バルセロナの中盤の競争率は格段に上がった。

ラキティッチだけではない。ブスケッツでさえ、今季序盤戦においては出場機会が減っていた。カンテラーノのカルレス・アレニャ、Bチームからの昇格が期待されるリキ・プッチには、ほとんど出番が与えられない。

だが規律をもたらす存在として、ラキティッチは不可欠だ。リオネル・メッシ、ルイス・スアレスという類稀(たぐいまれ)な決定力を備える2選手の守備の負担を軽減するために、ラキティッチが必要になる。サイドバックが上がったスペースをカバーするのも、ラキティッチの役目だ。

転機となったのは、チャンピオンズリーグ・グループステージ第5節ボルシア・ドルトムント戦だ。ラキティッチに、今季2度目の先発の機会がめぐってきた。それまでの出場時間は288分だった。

欧州最高峰の舞台に残るための重要な一戦で、ラキティッチは輝きを放った。そこから、ドルトムント戦、リーガ第15節戦アトレティコ・マドリー戦、リーガ第16節マジョルカ戦と3試合連続でスタメン出場を果たしている。

ドルトムント戦では、ラキティッチのボールロストから、バルセロナがピンチを迎える場面があった。昨季、チャンピオンズリーグ準決勝で、リヴァプールに「勘所」とされたのが、ラキティッチのところだった。アンフィールドの奇跡。その悪夢が甦ろうとした刹那、チームを救ったのはGKマーク=アンドレ・テア・シュテーゲンだった。

■守護神の力

もう一人、現在のバルセロナを支えている選手を挙げるとすれば、それはテア・シュテーゲンだろう。

アトレティコとの大一番では、好守を連発した。17本のシュートを浴びながら、クリーンシートを達成。マジョルカ戦では、今季2度目のアシストを記録した。

2014年夏にボルシア・メンヒェングラッドバッハからバルセロナに移籍したテア・シュテーゲンだが、バルセロナは彼を確保するために移籍金1200万ユーロを支払っている。アンドニ・スビサレッタ当時スポーツディレクターは、ビクトール・バルデスの後釜に、テア・シュテーゲンとGKクラウディオ・ブラーボの獲得を決めた。

ルイス・エンリケ(現スペイン代表監督)の下では、GKのローテーションが採用された。リーガではC・ブラーボが、チャンピオンズリーグとコパ・デル・レイではテア・シュテーゲンがゴールを守った。

2016年夏にC・ブラーボがマンチェスター・シティに移籍すると、テア・シュテーゲンが不動の正GKとなった。ここまでリーガ130試合に出場して、55試合を無失点で終えている。無失点率は42%だ。

メッシ、スアレス、アントワーヌ・グリーズマンの「MSG」に注目が集まるバルセロナだが、勝利の背景には、立役者の存在がある。ラキティッチやテア・シュテーゲンのパフォーマンスが安定していれば、それはチームの好調の証である。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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