なでしこジャパンに川澄奈穂美と永里優季が呼ばれない不可解さ。若手優遇は解決策なのか。
アルガルベ・カップが終わった。どうしても、気になる点が頭を擡げる。
なでしこジャパンはグループステージでオランダ、デンマーク、アイスランドと同組だった。2勝1敗で、5位・6位決定戦に回り、同決定戦でカナダに敗れて6位に終わっている。
アルガルベ杯の4試合のスタメンの平均年齢は25.06歳。昨年12月に行われたE-1選手権3試合でスタメンを飾った選手の全体の平均年齢は24.99歳だった。非常に若いチーム、という印象がある。
あまりにも正直に対戦相手と「がっぷり四つ」に組み、根負けして、敗れる。オランダ戦とカナダ戦はその典型だった。
2011年ワールドカップ優勝、ロンドン五輪準優勝を果たしたチームには、強(したた)かさがあった。澤穂希を中心に、守備では未然に危険の芽を摘み、相手を容易にファイナルサードには入れなかった。攻撃ではポゼッションを主体にしてゲームをコントロールしながらも、セットプレーやカウンターからもゴールが奪えた。
■戦い方に軸がない
現在のなでしこが見せる脆さ。それは戦い方に軸がないことの裏返しだ。対峙するチームがフィジカル任せにロングボールを多用してくると、たちまち後手に回ってしまう。オランダ戦では、相手の3トップに、いいようにあしらわれた。
高倉監督はオランダ戦後、「相手がパワーを生かして蹴り込んできた時にどう対応するかについて話しました。多くのチームは今後も日本に対し、こうした戦い方をしてくると思います」と話していた。
結果だけを見れば、アイスランド戦(2-1)、デンマーク戦(2-0)で立て直したか見えたが、カナダ戦(0-2)でなでしこは同じ轍を踏んだ。
「非常に悔しい敗戦。相手が持つスピードとパワーを受けないようにチーム全体で共有して試合に入りました。ですが、中盤のボール、ゴール前で守る場面あるいは攻める場面で力負けしてしまいました。肉体的な強さやスピードで、世界との大きな差は否めません」(高倉監督/カナダ戦後)
世界の強豪国相手に、フィジカルで劣っていると分かっていながら、オランダ、カナダに同じような負け方をしたのは気懸かりだ。
現なでしこは前線からのプレスを信条としている。ただ、長いボールを蹴られ、そのプレス網を剥がされると、次善の策がない。個の力で劣るなら組織で対抗すべきだが、現時点ではあやふやな戦術が目に付く。
■問題解決には至らず
攻撃についても、同様だ。とりわけ、フィニッシュの部分では大きな課題が残る。それは高倉監督も認めている。
「良い流れができて、シュートまで持っていくことはできたのですが、決め切れないところがありました」(オランダ戦後)
「勝ち切れてほっとしていますが、攻撃の課題は多いです」(アイスランド戦後)
「決め切るところが課題で、シュート練習を積み重ねていくしかないと思います」(デンマーク戦後)
決め切る。アルガルベ杯4試合6得点は十分な数字に見えるかもしれない。しかし、それ以上に、作り出された決定機をもっと決めていれば、という感覚を指揮官、選手たちは抱いていたはずだ。
守備・攻撃において、少なくとも、アルガルベ杯では、問題解決の糸口は見られなかった。
■W杯最終予選を控えて呼ばれるべき2選手
ここにきて、なでしこは選手起用を再考した方がいいのではないかと思える。
4月には、2019年W杯最終予選を兼ねたアジアカップを控えている。この大会で5位以内に入れば、本大会出場権を獲得できる。
そこに向け、是非とも呼んで欲しい選手がいる。川澄奈穂美(シアトル・レイン)と永里優季(シカゴ・レッドスターズ)だ。
川澄は昨季24試合に出場して6得点9アシストを記録。アメリカ女子プロサッカーリーグ(NWSL)でアシスト王に輝いた。
女子サッカーの最高峰リーグで、1試合平均0.62得点に絡んでいる。この結果は決して軽視されるべきではない。
永里は苦しい展開で前線で起点となり、タメを作ることができる選手だ。今のなでしこは、遅攻を選択した際に一つ一つのプレーに迷いが見られる場面がある。そこに彼女のような選手がいれば、一旦縦パスを入れて考える時間を作りながら攻めることが可能になる。
何より、永里には「一発」がある。現役選手のなかで、一瞬で勝負を決してしまえる決定力を備えた、稀有なプレーヤーだ。昨季は宇津木瑠美と川澄が所属するシアトルがタッチの差で出場を逃した、NWSLの優勝を決するプレーオフに出場した。アメリカで真剣勝負の中に身を置き続けている。
川澄と永里。この2選手が呼ばれない状況が続くのは、不可解でしかない。