Yahoo!ニュース

バレンシアが「3強時代」に風穴を開ける。若手を積極起用する指揮官に、圧倒的な攻撃力。

森田泰史スポーツライター
好調を維持するバレンシア(写真:Shutterstock/アフロ)

今季のバレンシアは本物だ。もしかしたら、本当に優勝争いに絡んでくることになるかもしれない。

リーガエスパニョーラ第5節から第12節まで、8連勝を記録。これはクラブレコードの数字となった。そして迎えた第13節、本拠地メスタージャで行われたバルセロナとの天王山で、バレンシアは首位を走るチームと対等に渡り合い、1-1と引き分けた。

周囲は驚きと好奇の目をもってして、彼らの好調ぶりを受け止めていた。だが今季すでにレアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、バルセロナとの試合を消化した時点で、堂々3位に位置するバレンシアを、タイトルレースの参入者と捉えて笑う者は最早いないだろう。

■圧倒的な攻撃力

バレンシアは、リーガ17戦で36得点を叩き込んでいる。バルセロナ(45得点)に次いで、リーガで2番目の数字を記録しているのだ。

マルセリーノ・ガルシア・トラル監督の下、シモーネ・ザザ、ロドリゴ・モレノの2トップが爆発。ザザはリーガで10得点、ロドリゴは8得点を挙げ、両者は得点ランクでそれぞれ3位と7位に位置する。

特筆すべきはザザの活躍だ。イタリア人ストライカーは、あの「英雄」に並ぶペースで得点を量産している。

現在ニューヨーク・シティに所属するダビド・ビジャは2008-09シーズン、09-10シーズンに序盤戦15試合で12得点を挙げた。最終的に2シーズン連続で20得点以上(08-09/28得点・09-10/21得点)を記録してサラ賞を受賞した。

■若い選手を試すマルセリーノ

マルセリーノ監督は、今季若い選手を積極的に起用している。

昨季から主力だったホセ・ルイス・ガジャ、カルロス・ソレールは当然ながら、トニ・ラト、ナチョ・ビダル、ナチョ・ヒルらまだ1部での経験が少ないカンテラーノにもチャンスを与えている。

マルセリーノ監督はサラゴサ時代にアンデル・エレーラ(現マンチェスター・ユナイテッド)、ビジャレアル時代にマヌ・トリゲロスをデビューさせた監督だ。バレンシア指揮官就任前の段階で、合計22人のカンテラーノをトップデビューさせている。

バレンシアで、その最新のケースとなったのが、フェラン・トーレスだ。17歳のフェランは昨年11月30日のコパ・デル・レイ4回戦第2戦サラゴサ戦でトップデビュー。71分、ナチョ・ヒルと交代でピッチに入り、トップチームの仲間入りを果たした。

バレンシアは昨年10月にフェラン・トーレスとプロ契約を交わしたばかりだ。契約期間は2020年まで伸ばされ、契約解除金は2500万ユーロ(約33億円)にまで引き上げられている。

U-17スペイン代表の主力として世界大会に出場したフェランには、マドリーやバルサが関心を寄せていた。バレンシアは大事に育ててきたカンテラーノに手垢がつかないよう、迅速に対応したのである。

この契約により、フェランは次の移籍市場以降、バレンシアBで試合に出られなくなる。だがクラブは若手を積極起用しながら結果を出しているマルセリーノ監督に信頼を置き、フェランとの新契約締結に踏み切っている。

■優勝の可能性は...

「優勝は難しい。だが、不可能だとは言わない」

これは第15節セルタ戦後にマルセリーノ監督が残した言葉だ。指揮官は確かな手応えを得ながら、しかし慎重な姿勢を崩していない。

現実的に言えば、バレンシアの目標は来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場権を確保するため、3位以内に入ることだろう。CLストレートインでさえ、6年ぶりの出来事になるのだから、十分過ぎる成果と言っていい。

それでも、ここまで調子が良いと、欲が出てくるのが人間というものだ。マドリー、バルサ、アトレティコ以外の優勝となれば、14年ぶりの快挙だ。その14年前、優勝のトロフィーを掲げていたのは、何を隠そうバレンシアなのである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事