レアル・マドリーを襲う空漠たる思い。失われた得点力に、控え組含めた総合力の低下。
レアル・マドリーの、失望の夜だった。リーガエスパニョーラで首位バルセロナと勝ち点を縮めるチャンスを、みすみす逃してしまったのだ。
3日に行われたリーガ第14節、マドリーは敵地サン・マメスでアスレティック・ビルバオと対戦した。同日の試合でバルセロナがセルタに引き分けていたため、勝てばポイント差を縮められた。
クラシコに向けて弾みをつけるべき一戦で、マドリーはビルバオ相手にスコアレスドローを演じた。試合後、ジネディーヌ・ジダン監督は苦虫を噛み潰したような顔でベンチを後にした。マドリーの選手たちを無力感を襲ったのは言うまでもない。
■アウェー神話が崩壊
リーガでは、昨季終盤からアウェー戦で抜群の強さを発揮してきた。2月26日の第24節ビジャレアル戦(3-2)以降、アウェー戦で13連勝。だが、10月29日に行われたリーガ第10節でジローナに1-2と敗れると、その神話が崩壊する。
そこからは第12節アトレティコ・マドリー戦(0-0)、第14節アスレティック戦(0-0)とアウェー戦で別人のようになってしまった。
マドリー不調の原因のひとつは決定力不足だろう。リーガ14試合消化時点で25得点。これは2006-07シーズンのファビオ・カペッロ政権以来、最低の数字である。
■解決法を見いだせない得点力不足
2016年4月26日から2017年9月20日まで73試合連続で得点を記録して、1963年に王様ペレが所属していたサントスが記録した数字に並んだマドリーだが、第5節ベティス戦でその記録が途切れると、攻撃陣は嘘のように得点力を失った。
クリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマはいずれもリーガで2得点と深刻な決定力不足に陥った。ガレス・ベイルは再び負傷離脱を余儀なくされ、「BBC」の存在感は日を追うごとに薄れている。
C・ロナウドはリーガにおいてシュート数68本で2得点。決定率は3,8%と頼りない。ベンゼマはシュート数21本で2得点、決定率は11%だ。なお、現在得点ランク1位のメッシはシュート数86本で13得点を挙げ、決定率19%としている。
■“Bチーム”論争が巻き起こった昨季とは対照的
昨季はアルバロ・モラタ(現チェルシー)、ハメス・ロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン)を筆頭に、“Bチーム”と称されたメンバーが奮闘した。
だが今季、ここまでベンチスタートの選手が得点したのは、わずか3得点だ。そのうち2得点は、8月13日のスペイン・スーパーカップ第1戦バルセロナ戦(3-1)で、C・ロナウドとアセンシオが記録。1得点は、リーガ第9節エイバル戦(3-0)でマルセロが記録したものだ。
リーガにおいては、途中出場選手の決勝点が一度も生まれていないのである。そのような状況で、ジダン監督は控え選手を信頼し切れていない。
■主力と呼べるのは13選手のみ
ジダン監督は今季69回交代を行っている。そのうち、およそ40%は後半30分以降の交代だ。指揮官に迷いが生じているのが分かる。
今季のマドリーで「主力」と呼べるのは13選手だ。その選手たちだけが、ここまでプレータイム1000分を超えている。
その13選手はセルヒオ・ラモス(1751分)、カセミロ(1698分)、トニ・クロース(1595分)、イスコ(1543分)、C・ロナウド(1471分)、マルセロ(1456分)、ナチョ・フェルナンデス(1438分)、ルカ・モドリッチ(1433分)、ダニエル・カルバハル(1350分)、ケイロール・ナバス(1350分)、ラファエル・ヴァラン(1343分)、ベンゼマ(1172分)、マルコ・アセンシオ(1164分)である。フィールドプレーヤーで次点はルーカス・バスケス(854分)だ。
■CLではグループ首位の座をトッテナムに譲る
チャンピオンズリーグ(CL)では、4位に甘んじるリーガほど、マドリーの力は落ちていない。それでも、グループH首位の座をトッテナムに奪われ、2位通過を強いられた。
その結果、今月11日に行われる抽選次第でマンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、パリ・サンジェルマン、ローマ、ベジクタシュと当たる可能性がある。強豪揃いだ。
CLではC・ロナウドが気を吐いており、直近11試合で19ゴールを叩き込んでいる。エースの決定力を拠り所にできるのは朗報だが、一方で総合力を引き上げる必要性は否定できない。昨季CL連覇・リーガ制覇と2冠を達成したジダン監督に、新たな課題が突き付けられている。