Yahoo!ニュース

【U-20W杯】久保建英が臨む初の世界大会の価値をどう見るか。周囲も「世界基準」の目で。

森田泰史スポーツライター
“飛び級”で選出された久保。初の世界大会に挑む(写真:田村翔/アフロスポーツ)

U-20ワールドカップの開幕が目前に迫っている。久保建英(FC東京U-18)にとって、初めての世界大会への挑戦だ。

10歳でバルセロナの下部組織に入団した久保は、その後「天才少年」として注目され続けてきた。バルサがFIFAに処分を科された影響で2015年3月に一時帰国を余儀なくされた久保だが、帰国後FC東京入りが決まると年代別の代表に次々と呼ばれ、15歳ながらU-20日本代表の一員として“飛び級”で檜舞台に立つことが決まった。

■ムバッペやテオはフランス代表のリストに含まれず

しかし、今大会における列強国の「本気度」とはいかなるものか。フランスの招集リストを見てみると、今季最も欧州を沸かせた選手の一人であるキリアン・ムバッペ(モナコ)は呼ばれていない。

ムバッペは今季のチャンピオンズリーグで18歳2カ月の若さでの得点を記録して、フランス人としてカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)に次ぐ史上2番目の記録を達成した。3月25日には、ロシア・ワールドカップ欧州予選のルクセンブルク戦に出場し、18歳95日で1955年以降同国最年少となるA代表デビューを果たしている。

さらにムバッペだけではなく、テオ・エルナンデス(アラベス)もフランスの参加メンバーから漏れた。テオは今夏レアル・マドリーに移籍することが濃厚だとみられている選手だ。テオのU-20不参加について、スペインでは「コパ・デル・レイ決勝出場が可能に!」との報道が流れ、フランスサッカー連盟の配慮で代表から“解放”されたと伝えられた。

■トップクラブで主力を張る選手たちは今大会不参加

問題は、そこだ。

欧州のトップクラブで主力を張ってきた選手たちは、この時期心身共に疲弊している。各国のサッカー連盟・協会は夏場の大会への出場を無理強いせず、招集を見合わせるケースが少なくない。

イタリア代表GKジャンルイジ・ブッフォンの後釜と目されるジャンルイジ・ドンナルンマ(ミラン)、イングランドの将来を担うマーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド)、ポルトガルの怪物レナト・サンチェス(バイエルン・ミュンヘン)らはいずれも今大会不参加だ。

一級品が出揃う大会では、ない。この若年層のワールドカップに置かれている価値を、今一度確かめる必要がある。

■久保を「世界基準」で見るのなら

久保、久保、久保―――。

2020年に開催される東京五輪に向け、新たなスター誕生を世間やメディアは待ち望んでいる。だが15歳の青年に懸かる期待は大き過ぎやしまいか。

世界を見渡せば、10代でフル代表デビュー、ビッグクラブまでたどり着きながら、その可能性を生かし切れずにあがく選手が現実に、いる。

現在ヘーレンフェーンで小林祐希と同僚のマルティン・ウーデガルトは、2014年8月の国際親善試合UAE戦で15歳253日でノルウェー代表デビューを飾り、同国のA代表最年少出場記録を更新。2015年1月にはレアル・マドリーに移籍を実現させた。その後ヘーレンフェーンにレンタル放出された彼は、オランダでも“爆発”の時を迎えられていない。

「活躍してから注目されたい」。これは久保の言葉であるが、彼自身の本音だろう。当の本人は今のプレーが、これほどの盛り上がりには値しないと冷静に分析している。

バルサ出身の久保に、知らず知らずのうちに「世界基準」を求めている気がする。ならば周囲の我々も、「世界基準」の目をしっかりと持ちたい。久保の才能をフィーバーで終わらせないために、だ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事