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バルサとマドリー、勢いの差は歴然 覇権の行方が懸かるクラシコの醍醐味

森田泰史スポーツライター
昨季はイニエスタの得点などもあり、バルサがベルナベウを征服した(写真:ロイター/アフロ)

「世界が止まる一戦」と称される試合では、一瞬ですべてが逆転しまう怖さがある。バルセロナとレアル・マドリー、現時点での勢いの差は歴然だが、何が起こるか分からないのがクラシコだ。

現地時間23日午後8時45分、舞台となるのは、マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウだ。リーガエスパニョーラ第33節での対戦を前に、首位マドリー(未消化1試合)と2位バルセロナの勝ち点差は3ポイント。マドリーはこの試合で勝利を収めれば、残り5試合で勝ち点9を積み重ねれば優勝という状況である。

マドリーにとって、2012年以来となるリーガ制覇が近づいている。思えば、マドリーはこの6年間、スペイン国内での覇権をバルセロナに譲り続けてきた。アトレティコ・マドリーが優勝を飾った2013-14シーズンを除けば、優勝の履歴はすべてアスル・グラナに染め上げられている。

■CLで分かれた明暗と勢いの差

クラシコを前に、両者の明暗ははっきりと分かれている。バルセロナはチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝でユヴェントスに敗れ、ベスト8敗退が決定。一方でマドリーは優勝候補と目されていたバイエルン・ミュンヘンを沈めて、史上初となるCL連覇に向けて前進した。どちらが波に乗っているか、論じるまでもないだろう。

マドリーはガレス・ベイルの負傷欠場により、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの“BBC”を欠きながらも、C・ロナウドのハットトリックでバイエルンを下した。スペイン屈指のテクニシャンであるイスコは、シーズン終盤に入り本領を如何なく発揮している。18歳時にその才能を高く買われ、レンタル移籍を経て今季本格的にトップチームの一員となったマルコ・アセンシオの台頭もあり、チーム内の競争は激化の一途を辿る。強いチームは、Bチームが強い。マドリーはその通説を体現している。

前節スポルティング・ヒホン戦、バイエルン戦を欠場したベイルは、バルセロナ戦にも間に合うか微妙だ。しかしながらイスコ、アセンシオ、ハメス・ロドリゲス、アルバロ・モラタと、看板3トップの代役として計算の立つ選手はいくらでもいる。「全24選手が重要な存在だ」と主張してきたジネディーヌ・ジダン監督のマネジメント力が、ここまでは確実に成果を挙げているということだ。

■ベルナベウを何度となく征服してきたバルセロナ

マドリーが好調なのは、間違いない。だがバルセロナにもチャンスはある。過去8年のリーガにおける敵地ベルナベウでの戦績は、5勝1分け2敗。昨季は負傷明けだったリオネル・メッシをベンチスタートとしながら、4-0でベルナベウを征服した。

今回のクラシコでは、第31節マラガ戦で第4審判への侮辱により3試合の出場停止処分を受けたネイマールの欠場がほぼ確実だ。ルイス・エンリケ監督はメッシを先発外としなければならなかった昨季の対戦で、セルジ・ロベルトを右WGに置き、ネイマールとルイス・スアレスと共に最前線に据える奇策を講じている。その実は4-3-3と変則的4-4-2の併用で、MFを本職とするセルジの起用によりバルセロナは中盤で数的優位を確保し、マドリーの守備をズタズタに切り裂いて見せた。

L・エンリケ監督はリーガの覇権が懸かった大一番で、第30節セビージャ戦以降施行を控えてきた3-4-3を、再び解き放つ可能性もある。マドリーの血に「逆転のDNA」があるとすれば、バルセロナには「ポゼッションのDNA」が流れている。ボールを保持し、主導権を握り、相手を圧倒してた末に勝利があると、バルセロニスモは信じている。

バルセロナはここで勝たなければ1週間で2つのタイトルを放棄することになる。しかし大きなリスクを孕んだ試合で、今一度ベルナベウを征服できれば、そのリターンは計り知れないものになるはずだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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