Yahoo!ニュース

シベリアで「マイナス58.7度」12月としては約半世紀ぶり

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
3日、記録的大雪と凍える寒さのモスクワで撮られた写真(写真:ロイター/アフロ)

シベリアで5日(火)、気温がマイナス58.7度まで下がって、今季一番の寒さとなりました。またおよそ500人が住む「世界一寒い村」オイミャコンでは、6日(水)にマイナス57.6度まで下がりました。

いくら寒さで有名な場所とはいえ、今はまだ初冬です。この時期の最低気温の平均はマイナス45度ほどですから10度以上も低く、12月上旬としては過去40年以上でもっとも低温となったようです。

原因は偏西風が南に蛇行したことで、北極の空気がシベリアに流入しているためです。寒気は先週末から流れこんでおり、オイミャコンの最低気温は4日連続でマイナス50度を下回っています。

雪の記録も更新

雪の記録も更新されています。

首都モスクワでは3日(日)、11センチの大雪が降って、1878年の統計開始以降でその日に降った雪としては観測史上最大となりました。

その前日にはドイツ南部ミュンヘンで、12時間で43センチという大雪が降って、12月の観測記録となりました。

冷たい氷雨の影響でミュンヘンの空港に停まっていたプライベートジェットが凍りつき、下の動画のようにバランスを崩して後方に倒れてしまいました。皮肉なことにこの飛行機は、温暖化対策について話し合うCOP28の出席者を乗せドバイに向かう予定だったそうです。

温暖化と強烈寒波

「温暖化と寒さ」といえば、元トランプ大統領のある発言が思い出されます。今から6年前、アメリカでサメも凍死する記録的な寒波に見舞われたときのこと、彼はこう発言しました。

「美しきアメリカ中西部では、体感温度がマイナス50度とかつて経験したことのないような寒さとなっている。その後もさらに気温は下がるそうだ。人々は少しの間も外には出てはいられない。一体温暖化はどうなっているんだ!早く戻ってきてくれ、我々は温暖化が必要だ!」

これに対してアメリカ気象局は、海水温が上がると雪雲ができやすくなって雪が多くなるし、偏西風の流れも変わって、北極から寒気が下りやすくなると反論しました。

温暖化しているのに寒いのは一見矛盾しているようですが、場所によって厳しい冬になるというわけです。

夏と冬の気温差100度超

日本人が一番好きな季節は、春、秋、次いで夏、冬と続きます(※)。アメリカでも全く同じ結果が出ています。

要するに国や民族の垣根を越えて、気温が極端な夏と冬は嫌われがちなのですが、温暖化する地球では夏はさらに暑くなって、冬は一時的に急激に冷えるかもしれなくなるようです。

先が思いやられますが、とりわけ気の毒なのはシベリアの人かもしれません。シベリアは2020年に観測史上最高の38度を記録しましたから、冬との気温差は100度以上にも上ります。いろいろな面で問題が生まれてくるのは必至です。

※NHK放送文化研究所調べ(2008年)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事