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ブラジルで史上最高44.8度 まるで"ヘル"デジャネイロ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
NASA出典の19日に衛星画像に筆者加筆

春真っ只中のブラジルで、大変な記録が生まれてしまいました。

19日(日)、ブラジル西部のアラスワイで日中の気温が44.8度に達し、ブラジルの観測史上最高気温となりました。これまでの記録は2005年に出た44.7度でした。

「“ヘル”デジャネイロ」

一方17日(金)には、リオデジャネイロで行われたテイラー・スイフトさんのコンサートで、23歳の女性が熱中症で亡くなるという悲しい出来事が起きました。

亡くなった女性はテイラーさんの大ファンで、生まれて初めて飛行機に乗ってやってきたのだそうです。

コンサートが行われたリオデジャネイロの当日の最高気温は39.1度で、高い湿度も加わって体感温度は60度近くに達していたと言われています。同市の11月の平均最高気温は26度ですから、とんでもない高温です。

尋常でない暑さから、いよいよ人々はリオデジャネイロを「“ヘル”デジャネイロ」などと呼びだしたようです。ヘルは地獄を意味します。

4か月連続記録

記録的な暑さは今に始まったことではありません。ブラジルでは7月から4か月連続で、各月の高温記録を更新しています。

「ブラジルから冬が消えてしまったー。」人々がそう口にするように、真冬でも春、はたまた夏を思わせるような陽気が続いていました。

季節外れ酷暑の原因

背景には何があるのでしょうか。気候変動のほかに、エルニーニョ現象が指摘されています。

現在ペルー沖の海水温が高くなるエルニーニョ現象が起きていますが、これが起きると、ブラジル(特に北部)で高気圧が発達しやすくなって、雨が少なく高温になる傾向があります。

アマゾンで観測史上最悪の干ばつ

干ばつは、世界最大の熱帯雨林アマゾンをも直撃しています。森を流れるネグロ川の水位は統計のある過去120年間でもっとも低くなりました。

またテフェ湖では水温が40度近くまで上がって、希少なピンクイルカが1週間で130頭も死んでしまったそうです。

ネグロ川の衛星写真。1年前(左)と比べて川が干上がっているのが分かる。(NASA出典の画像に筆者加筆)
ネグロ川の衛星写真。1年前(左)と比べて川が干上がっているのが分かる。(NASA出典の画像に筆者加筆)

2023年は世界でもっとも暑い年

ブラジルにとどまらず、今年は世界各地で高温記録が塗り替えられています。

たとえばアジアでは中国で52.2度、タイで45.4度、ベトナムで44.2度と、いずれも国内最高気温(暫定)が観測されました。

またアフリカ大陸のモロッコでは50度、チャドでは48度、さらに南米ペルーで42度、はたまたヨーロッパのアルバニアで44度と、あちこちで新たな記録が生まれています。

2023年は地球にとって99%の確率で観測史上もっとも暑い年になるだろう、そうNASAは計算しています。さらにエルニーニョ現象が続く2024年は今年以上に暑くなるだろうとも言われています。

気温上昇を抑えるためにどうすべきか。これまでのような緩慢な対策では、にっちもさっちも行かなくなっていることは確かです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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