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ハワイ有数の観光地を襲う山火事 拡大の原因はハリケーン

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ハワイの南を通過するハリケーン・ドラ (出典: NASA)

ハワイ王国の首都であり、歴史ある街並みときらびやかなホテル群が立ち並ぶマウイ島のラハイナが、いま、火の海に包まれています。

ハワイの南を移動するハリケーンからの強風で、マウイ島では火が猛スピードで燃え広がり、住民や観光客が避難を余儀なくされています。炎と煙から逃れようと海に飛び込んだ人々もいました。

これまでの死者数は6名で、20人が重度のやけどを負っており、行方不明者もいると伝えられています。

1992年にハワイに観測史上最強の勢力で上陸したハリケーン「イニキ」以来最悪の自然災害となりました。

火災は大規模で、衛星画像でもしっかりと確認ができるほどです。ラハイナ上空をヘリで飛んだパイロットは、「歴史的な町の多くが消失し、まるで爆撃された戦争地帯のようだ」とその被害の深刻さを語っています。

このラハイナのほかに、キヘイという特にカナダ人に大人気のビーチや、クラというのどかな高原でも火災が発生しており、火の勢いは収まるどころか、手の付けられない状況となっています。

強風の原因

山火事が広がった原因は、ハワイの南を移動しているハリケーン「ドラ」による強風です。

約1,000キロも離れた海上にありますが、上から2番目に強い「カテゴリー4」の勢力にまで発達しており、ハワイ全域で強風が吹き荒れています。ホノルルでも8日(火)、最大瞬間風速が36メートルに達しました。

このドラの強風に加え、マウイ島では山からの吹き下ろしの効果も加わって、非常に乾燥した強い風が吹いています。

そのうえ、マウイ島西部は雨が少ない状況が続いていたため、全域で干ばつ状態となっていました。つまり燃えやすい状況の上に、乾いた猛烈な強風が吹いて、山火事が拡大してしまったのです。

強風はいつまで

NWS出典のハワイの警報 (9日)
NWS出典のハワイの警報 (9日)

強風はいつまで続くでしょうか。上は、現在ハワイ島に出ている警報です。ピンクは「レッドフラッグ警報」と呼ばれるもので、火災が起こりやすいときに発令されます。

カリフォルニアなどアメリカ本土ではしばしば出される警報ですが、ハワイではあまり出ることはありません。最大22メートルの突風、湿度40%の乾いた状態、さらに30度以上の気温と、山火事が広がりやすい3条件が9日(水)いっぱいは揃い続けるもようです。

ドラの今後

NHC出典のドラの予想進路図 (9日)
NHC出典のドラの予想進路図 (9日)

ハワイから離れているにもかかわらず甚大な被害を出しているドラですが、その経路も非常に稀有なものです。

先月31日に太平洋東部で発生し、強まりながらハワイ周辺の太平洋中部を移動しています。さらに11日(金)にも日付変更線を通過して太平洋西部に到達する見込みです。3海域をまたぐハリケーンはかなり珍しいことです。

太平洋西部にやってくるということは、台風に名称が変わることになりますので、このままいくと「台風8号」となる可能性があります。

1994年には同じように3海域を移動したジョンというハリケーンがありました。ジョンは31日間も海上を漂い、当時の世界最長寿記録を打ち立てたほどでした。エルニーニョの年は、こうしたご長寿ハリケーンが発生しやすいことが知られています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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