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ローマで史上最高気温も 地球は過去もっとも暑い2週間

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
今年7月6日は過去最高気温 (米メーン大学のデータを元に筆者作成)

もっとも静かに、もっとも多くの人々を苦しめる自然現象は、熱波です。台風のように派手でもなく、豪雨のように強烈でもなく、じりじりと人を死に追いやります。

ローマ最高気温

今夏、世界のあちこちから高温記録が生まれていますが、今度はヨーロッパで記録が塗り替えられました。

イタリアの首都ローマでは18日(火)、気温が42.9度まで気温が上がり、統計開始以来の最高気温となりました。この時期の気温を10度以上も上回るうえ、これまでの記録である40.6度(1981年8月4日)を大幅に超しました。

またスペイン東部フィグエレでは、カタロニア地方の観測史上最高となる45.3度が記録されました。

この南ヨーロッパに灼熱の天気をもたらしている高気圧は、「Charon」という呼び名がつけられています。この名前はギリシャ神話に登場する、冥界に魂を運ぶ渡し守に由来するそうです。

世界の高温記録

ここ数日世界では、聞くだけで汗が垂れてくるような暑さが報告されています。

【中国】

16日(日)は中国北西部のトルファンで、52.2度の気温が観測されました。現在は暫定値ですが、中国国内の過去最高気温となる可能性があります。

【アメリカ】

また17日(月)にはアメリカ南西部デスバレーのバッドウォーターにおいて、午前1時頃の気温が48.9度となりました。これは真夜中過ぎの気温としては、世界の観測史上もっとも高温であった可能性があるようです。

日本では25度以上の夜を「熱帯夜」といいますが、この場合、何と呼べばいいのでしょうか。

さらに同日はアリゾナ州フェニックスで、19日間続けて日最高気温が43度を超し、観測史上最長記録となりました。大手量販店のターゲットは、屋内で働くスタッフに初めて短パン着用の許可を出したそうです。

またフロリダ州マイアミでは観測史上初めて「猛暑警報」が出されました。異常高温の大きな原因は、過去最高に達している海水温で、37度以上に達しています。

【大西洋に太平洋】

マイアミ沖を含めた北大西洋は、観測史上最高水温となっていて、気象学者も目をぱちくりさせています。一方で東部太平洋ではエルニーニョが起きていて水温が高く、加えて東北沖の海水温も平年を5度以上も上回っています。

過去12万年でもっとも暑い日

7月6日は観測史上最も暑い日だったと、アメリカの研究機関が発表しています。それどころか、ある研究者は、過去12万5千年間を振り返っても、これほど暑い日はなかったと考えているほどです。

普通、一年で最も暑いのは7月下旬です。暑さのピークはこれからです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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