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今年最強ハリケーン・カルビン、ハワイ直進コースか

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
急発達するハリケーン・カルビンの衛星画像 (NOAA出典)

ハリケーン「カルビン(Calvin)」が、太平洋の東部で急速に発達しています。この海域では、今年3つ目、そして今年最強のハリケーンです。カルビンは来週ハワイに最接近する可能性が出てきました。

ハワイ直進コースか

14日(金)現在、カルビンの最大風速は54メートル(1分平均)で「カテゴリー3」の勢力です。これは上から3つ目の強さで、台風でいうところの「非常に強い」勢力にあたります。

ハリケーンの予測を担当する、国立ハリケーンセンターの気象官は、どうもカルビンの強さの予想に関して頭を悩ませているようです。当初はここまでの発達を予想していませんでした。

しかし進路に関しては、これまでのところ一貫してハワイ直進コースを予想しています。

最新の予想では、現地時間19日(水)未明前後にハワイ島に直撃または最接近する可能性が高まっています。

国立ハリケーンセンターが14日に発表したカルビンの予想進路図。筆者加筆。
国立ハリケーンセンターが14日に発表したカルビンの予想進路図。筆者加筆。

ハワイ接近時の強さ

ではハワイ接近時の強さはどうなのでしょうか。

その鍵の一つとなるのが海水温です。下図は世界の海水温の平年差を表しています。赤色が平年よりも高い所、青色が低い所です。

恐ろしいことに今年、世界の海洋の平均水温は、観測史上最高レベルに達しています。エルニーニョも起きていますし、北大西洋などは過去最高水温で、フロリダ沖の海水温はなんと37度もあります。

NOAA出典の13日における世界の海水温の平年差。筆者加筆。
NOAA出典の13日における世界の海水温の平年差。筆者加筆。

ところが、ハワイの東の海域は例年よりもやや低く、25~26度です。ハリケーンの発達には27度近い暖かさが必要ですから、それをやや下回ります。

この比較的冷たい海水などといった要因に阻まれて、ハワイ接近時には温帯低気圧へと変わると予想されています。

しかし、それでも強風や大雨は避けられません

嵐への脆弱性

ハワイは、大雨の世界記録を持つ一方で、島の南西部は、普段からほとんど雨が降りません。たとえばホノルルの年間降水量は360ミリで、これは東京の5分の1ほどです。

ですから、はたから見ても嵐に耐えられそうにない簡易的な家や古い家も多いです。そのうえ火山島であるハワイには、高い山や急斜面が多く、土砂災害も起きやすいのです。

ハワイで嵐が予想されているのは、いまのところ現地時間18日(火)から20日(木)ですが、なんせ予想の難しい嵐ですから、最新の動向にご注意ください。

国立ハリケーンセンターの最新の予測はコチラをご参考ください。

※7/21追記※

カルビンは、18日夜から19日朝にかけてハワイ島の南をトロピカルストームの勢力で通過していきました。ハワイ島では半日で176ミリの雨が降りました。幸いにして目立った被害は出ませんでした。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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