今年のカナダ西部の天気は、あまりにも振れ幅が大きく、唖然としてしまいます。

夏にはブリティッシュコロンビア州で、国内の観測史上最高気温となる49.6度を記録、さらに数百件にも及ぶ山火事が発生しました。しかし秋に入ると、連日雨が降り、先週末から15日(月)にかけては、川の水位が観測史上最高の高さに達しています。

13日(土)から15日(月)までの降水量は、カナダ・ホープで293ミリ、バンクーバーでは14日(日)に日最大記録となる53ミリの雨が降りました。

悪天の影響で、各地で土砂崩れが発生しています。またメリットという町では、1,000軒が浸水し、全住民が避難を余儀なくされました。(メリットの様子↓)

「大気の川」とは…

この大雨の一因は「大気の川」と呼ばれる現象です。

雲が川のように連なっていて、太平洋中部から北米大陸の約5,000キロにわたって伸びています。

熱帯の海上の大量の水蒸気が、この川を伝って、カナダやアメリカの西海岸に流れ込むのです。その川の支流がハワイ周辺であることから「パイナップル・エキスプレス」などと、ゆるいあだ名も付けられています。

大気の川が北米西海岸の山脈にぶつかって大雨が降る (NOAA出典)
大気の川が北米西海岸の山脈にぶつかって大雨が降る (NOAA出典)

「大気の川スケール」

2019年に、この大気の川を規模別にランク分けしようとスケールが作られました。アメリカのスクリップス海洋研究所が、1から5の5段階スケールを作ったのです。

そのスケールは以下のようなものです。

Ralph氏らが執筆したアメリカ気象学会誌掲載の論文を参考に筆者作成
Ralph氏らが執筆したアメリカ気象学会誌掲載の論文を参考に筆者作成

カテゴリー1が「弱い(weak)」2が「並み(moderate)」3が「強い(strong)」4が「非常に強い(extreme)」5が「並外れて強い(exceptional)」です。

今回ブリティッシュコロンビア州に流れ込んだ大気の川は、最強のカテゴリー5であるとも報じられています。

このスケールが興味深いのは、水蒸気の量だけではなく、流入時間も考慮されていることです。水量はカテゴリー1でも、さらに24時間長く続けば2というように、時間が増えるとカテゴリーも上がります。

ハリケーンのスケールの場合、弱くてゆっくり進むハリケーンはカテゴリーがそぐわないことがあります。それは、弱くても嵐が続けば被害が広がるからです。大気の川のスケールは、そうした問題点もクリアするように作られたようです。

ちなみに現在のところ、アメリカ気象局はこのスケールを使用していません。

日本にも脅威

大気の川は北米大陸にとどまらず、ヨーロッパ西部、チリや南アフリカ、韓国や日本などといった世界のあちこちで見られます。1990年代の研究によれば、熱帯から北の地域に水蒸気が運ばれる場合、その9割が大気の川が原因なのだそうです。

今年の梅雨期にも、日本上空にインド洋から伸びる大気の川がやってきて、西日本に記録的な豪雨をもたらしました。

これからの大気の川

温暖化が進むと、大気がより多くの水蒸気を含めるようになるうえに、海や湖からの蒸発量も増えます。そうなると、大気の川がより長く、太く、湿ることが予想され、それに伴う経済的損失もさらに大きくなっていくだろうと考えられています。