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オーストラリアで"16センチ大"のひょう、国内記録更新

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
豪州気象局出典のひまわりの衛星画像に筆者加筆

春爛漫の南半球オーストラリアですが、先月からちょっと忙しい天気が続いています。9月には珍しい巨大竜巻が次々に発生、今月14日(木)にはシドニーに雹の嵐が襲いました。そして19日(火)には、オーストラリアの観測開始以降もっとも大きなひょうが空から降ってきました。

巨大なひょうが降ってきたのは、オーストラリア東部クイーンズランド州のヤルボローという町です。19日(火)午後、直径16センチの氷の塊が空から降ってきました。16センチといえば、壱万円札の横幅がちょうどその長さです。

下の写真は、その実際の雹です。球ならまだしも突起が付いています。当たったら刺さってしまいそうです。

これまでの国内記録は、1999年にニューサウスウェールズ州に降った、直径14センチのひょうのようですが、早速オーストラリア気象局は、今回の16センチのひょうを公式に国内最大と認定しました。

ひょうの落下速度

ひょうの落下速度はどのくらいでしょうか。

2.5センチ大だと時速40キロ、10センチだと115キロ、それ以上だと160キロを超えることもあるようです。まるで高速道路をスピード違反して駆け抜ける車並みの速度で、重たい氷が地面めがけて降ってきたのです。

原因まだ居座る

このひょうを降らせたのは、スーパーセルと呼ばれる巨大な積乱雲でした。その背景には付近の低気圧と北東から吹く湿った風の影響がありました。

同じような気圧配置は20日(水)になっても続いており、まだ「巨大ひょう」の可能性があると気象局は注意を呼び掛けています。

豪州気象局の19日の天気図に筆者加筆
豪州気象局の19日の天気図に筆者加筆

世界一のひょう

16センチでも相当巨大ですが、世界記録はそんなものでは収まりません。現在の公式記録は、2010年アメリカ・サウスダコタ州ビビアンで降った直径20.3cmのひょうです。重さは0.88キロに及び、ひょうが地面に落ちて25cmも穴が開いたと伝えられています。

しかし、2018年アルゼンチンに落ちてきたものはそれ以上で、直径23.4センチもありました。下がその写真です。まだ公式に認定されていませんが、これが世界一となる可能性が高くなっています。

ちなみに、1917年には埼玉県で直径29.5センチのカボチャ大のひょうが降ったと文書に書かれてあります。しかし残念ながら写真などの証拠が残っておらず、公の記録とはなっていません。

もし巨大ひょうを見つけたら、物差しなど比較ができる対象物と一緒に写真に収めておきましょう。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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