「アンドレス」観測史上もっとも早い1号に 太平洋東部
太平洋西部の台風2号が「4月の観測史上、最強」と騒がれたのが先月のこと。続けて今月は太平洋東部で異変が起きています。観測史上もっとも早い5月9日に第1号が発生しました。
第1号の意味と名前
生まれたての台風は、日付変更線を隔てた太平洋東部では、トロピカルストームと呼ばれます。これは最大風速が17メートル以上に達した熱帯低気圧のことで、これがさらに強くなって最大風速が33メートルを超えると、よく耳にする「ハリケーン」とカテゴリーが変わります。
外国ではトロピカルストームやハリケーンに名前を付けるという小粋な慣習があり、ローラやジェームズなどよくある人名の他に、テディといったかわいらしい名前が登場することもあります。中でも今年は異例中の異例で、オラフやアナといったディズニーキャラクターの名前が登場する予定です。
1日記録を塗り替えたアンドレス
このように名前のついた第1号のトロピカルストームが、現地時間9日(日)未明にメキシコ沖で発生しました。気になる名前はアンドレス(Andres)です。少し普通です。
しかし発生日は異常です。1960年代から続く太平洋東部の観測史上もっとも早くに発生したトロピカルストームとなりました。これまでの記録は、2017年のアイドリアン(Adrian)で、発生日は5月10日でした。つまりアンドレスはその記録を1日破ったことになります。
一般に、この海域で第1号のトロピカルストームが発生するのは、6月10日頃と言われています。
アンドレスの今後
観測史上最早と、その登場こそドラマチックなアンドレスですが、今後の動きは地味そのものです。幸いにして強まることはなく海上で衰弱し、陸上に影響を及ぼすことはなさそうです。
記録はその他の海域でも
今年は世界の海上で記録的な現象が次々と発生しています。
たとえば先ほど話に出した台風2号は、太平洋における観測史上もっとも強い4月の台風となりました。気象庁によればその中心気圧は一時895hPaまで下がりました。これまで海水温がまだ低い4月までの時期に、900hPa台の台風が発生した記録はありませんでした。太平洋東部でも台風2号を上回る記録はありません。
さらにその数週間前に、赤道を隔てた南太平洋で発生したサイクロンも記録を作りました。セロジャ(Seroja)です。セロジャはインドネシアや東ティモールで200人以上の死者を出した後、西オーストラリア州に上陸、豪州の観測史上もっとも南西に上陸した最強サイクロンとなりました。
さらに先月はブラジル沖の南大西洋でも「亜熱帯低気圧」と呼ばれる、ハリケーンと温帯低気圧のハイブリッドの嵐が発生、観測史上15個めの珍事となりました。そのうえ南インド洋では強いサイクロンが発生して、69年ぶりにアフリカ東部タンザニアに上陸するのではと叫ばれました。幸い上陸前に弱まりましたが、今年は世界的に何かおかしなことが起きているようです。
今年は念のために、いつもより前もって台風や嵐への備えをしておくのもいいかと思います。