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「数十年に一度の大水量」もコロナでお預け ヴィクトリアの滝

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
アフリカ・ヴィクトリアの滝の資料写真(写真:アフロ)

世界の自然七不思議(The Seven Natural Wonders of the World」の一つにも数えられる、アフリカのヴィクトリアの滝。新型コロナウイルスの影響で閑散としているこの場所で、いま10年来の壮大な景色が広がっているようです。

去年の4倍の水量

「ヴィクトリアの滝」は、アフリカ南部のジンバブエとザンビアの国境に位置しています。落差と幅の両方から見た滝の規模は世界最大級で、一秒あたりの流量は年平均1,100トンです。ちなみにこれは華厳の滝の1,000倍超に当たります。

このヴィクトリアの滝の20日(月)の流量は、一秒間3,922トンにも達し、2010年以来最高を記録しています。また昨年の同日の流量は1,007トンだったので、この約4倍です。

ヴィクトリアの滝に注ぎ込むザンベジ川の上流域で、このところ雨量が増えていることが原因です。現在、ザンベジ川の水位は、昨年の5倍超に達しているといいます。

滝の水量は4月末にかけて再び増加する見込みで、その流量は4,300トンに達し、1970年代以来で最大となると予想されています。つまり、半世紀ぶりの大絶景が期待できるのです。

しかしながら、現在は新型コロナウイルスの影響で、国立公園一帯が閉鎖となっています。この貴重な光景を目にする人はほとんどおらず、お蔵入りとなってしまいそうです。本当に惜しいことです。

史上もっとも水量の多い1958年

なお、これまででもっとも水量が多かったのは1958年で、この時の流量はなんと一秒間で9,436トンにも及んだそうです。現在の2倍超です。下の動画は、その時に下流のカリバダムで撮られた映像です。

4か月前の様子

ところで、今とは打って変わって、昨年12月、つまり4か月前には、ヴィクトリアの滝の水が枯れ、滝底がむき出しになっていました。今からは想像できない状況です。

一般的に、5月から12月というのは乾季にあたり、水が少ない時期ではあります。昨年末の水量は25年で最低とも言われました。その背景にはアフリカ南部における、100年で最悪の大干ばつがありました。

オンライン旅行

残念ながら、現在のヴィクトリアの滝の様子が見られるウェブカメラは見つかりませんでした。

しかし、こんな便利なサイトがあります。例えばEarthCamというサイトでは、アメリカのグラントキャニオンや、ブラジルのリオデジャネイロといった世界の自然七不思議や、世界中の観光地の今の状況がいつでもどこでも見られるのです。

今年はゴールデンウィークも旅行に行かれそうもないので、バーチャルで旅行を楽しんでみるのも手かもしれません。

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NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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