「気候の人工操作」研究に400万ドル投入 アメリカ

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

温暖化が止まらないなら、人工的に止めてしまおうではないか、そんな研究が進んでいます。それは「気候工学(ジオエンジニアリング)」と呼ばれる分野で、新たな温暖化対策として、欧米を中心に注目されています。

そしてこの度、パリ協定から脱退して、地球温暖化に背を向けてきたイメージのあるアメリカ政府も、その研究に400万ドル(約4億4千万円)以上の予算を計上すると公式に発表しました。

具体的な方法

その具体的な方法は、どのようなものでしょうか。

アメリカ海洋大気庁の科学者は、人工的な気候操作をすぐに実行することはないものの、温暖化が食い止められなかった時の次善の策として、以下の二つの方法を研究する予定であるとE&E Newsに話しています。

<成層圏エアロゾル注入法>

その一つ目の方法というのは、二酸化硫黄などの微粒子(エアロゾル)を成層圏に注入して、強い太陽光から地球を遮るというものです。

成層圏とは、気象現象が起きる対流圏の上にある、安定的な大気層をいいます。ここにエアロゾルを注入することで、それが空中に留まって、地表に届く太陽光を調整できるというのです。

1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火したときに、エアロゾルが成層圏に滞留し、地球の平均気温が0.5℃下がったことが前提にあります。

<低層雲の反射率増加>

二つ目が、海塩を使って海上に低層雲を発生させるというものです。塩の微粒子が核となって雲が増えて、その結果、太陽光の反射率を高めるのです。

航行する船の後には、排ガスからのエアロゾルが核となってできた「航跡雲」という雲ができます。この雲は反射率が高く、太陽光を反射し地表を冷却する効果があるのですが、この作用を利用したものです。

(↑船の航跡雲)

以上の2つの方法のように、太陽光を人工的に反射させる方法を、気候工学では「太陽放射管理(SRM)」と呼んでいます。

副作用とリスク

太陽放射管理は、短時間に効果をもたらすことができると言われていますが、いくつかの副作用やリスクも指摘されています。

そもそも二酸化炭素を減らさないために、もしプロジェクトが停止してしまったら、温暖化が急激なスピードで現れること、さらに地域ごとに降水のパターンを変えてしまう可能性があるそうです。

二酸化炭素を取り除く

一方、気候工学には「太陽放射管理」以外の方法として、二酸化炭素を直接取り除く「CO2除去(CDR)」があります。

例えば海に鉄を撒いてプランクトンを増やし、光合成が活発になることで二酸化炭素を減らしたり、直接大気から二酸化炭素を回収したりするなどの方法があります。こちらは温暖化の直接の原因を除去しているために、より安全で理想的にも思えますが、コストや実現性の面でたくさんの課題があるようです。

気候工学は将来的に地球を救う一手になる可能性もあります。しかし、その奥の手があるからといって、温暖化を抑制する努力を止めてほしくないものです。

【参考文献】

『気候工学入門ー新たな温暖化対策 ジオエンジニアリング (日刊工業新聞社、2011年)』杉山昌広著