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国内最高記録50.7℃到達か オーストラリアを襲う強烈熱波

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
17-19日の熱波予想。オレンジは「極端な熱波」(出典: オーストラリア気象局)

オーストラリアの先住民アボリジニーは彼らの住む高温な気候に耐えられる特別な遺伝子を持つように進化してきたそうです。それはケンブリッジ大学の研究により明らかになったのですが、調査したアボリジニーの半数に、高温な際でも体温調整を行える遺伝子が見つかったのだといいます。

ダーウィンの進化論を裏付けるほど、過酷な環境のなか生き残ったアボリジニーにとっても、今年は容赦ない暑さが襲っています。1月は観測史上もっとも暑い月となり、同月に行われたテニスの全豪オープンの勝利インタビューでは、大坂なおみ選手が「外は暑いので、早く中に入りたいわ」と発言するほどでした。

今週はそれ以上に気温が上がるおそれが出てきます。

記録続々と

一体何℃まで上がる予想なのでしょうか。

17日から20日にかけて南部を中心に熱波が襲い、週後半からは熱波は東部へと広がっていく見込みです。この時期の気温を20℃以上も上回る所も出てきそうです。

具体的に温度を見てみると、例えば20日はアデレードで44℃(平年差+17℃)、またビクトリア州ミルドゥラでは47℃(+17℃)、そして21日には首都キャンベラで43℃(+17℃)まで気温が上昇する予想になっています。なお、もしキャンベラで43℃まで気温が上がれば、同市の観測史上最高気温となります。

さらに18日から19日には南部の内陸部で49℃から50℃近い高温となって、オーストラリア全土の12月の最高気温記録49.5℃だけではなく、国内最高気温50.7℃の記録も塗り替えられる可能性も出ています。

山火事

すでに記録的な山火事が問題になっているオーストラリアですが、今回の熱波により状況はさらに深刻化します。

16日時点では、オーストラリア全土で110件の山火事が発生しており、今年のこれまでの焼失面積は27,000平方キロメートルに及んだと伝えられています。これは東京都の12個分、もしくは四国の1.4個分の面積に匹敵するほどの広さです。

可哀そうなことに、2,000頭ものコアラが焼死した可能性があり、しかも火の勢いが強すぎて死骸も見つからないほどだと伝えられています。コアラは燃えやすいユーカリの森に生息し、逃げ足も遅いので、山火事の犠牲になりやすいのです。

オーストラリア、温暖化対策ほぼ最下位

近年オーストラリアの気温は上昇の一途をたどっているというデータがあります。年平均気温は1910年と比べ約1℃高くなり、35℃以上の日数は、年間12日のペースで増加しているそうです。

このように気候の変化が顕著なオーストラリアですが、政府は温暖化対策にあまり乗り気ではないようです。先日国際NGOが、国の気候変動への対策や進展状況をランク付けした「気候変動パフォーマンス・インデックス(CCPI)」を発表しましたが、オーストラリアは下から4番目の56位でした。ちなみに最下位は61位のアメリカで、日本は昨年から2つ順位が下がって、51位にランクされています。

  • 参考文献

気候変動パフォーマンス・インデックスの報告書 (PDF)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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