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山火事で燃えた家の前で、飼い主を待ち続けた犬の話【カリフォルニア州】

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
カリフォルニア州パラダイスの山火事 (8日)(写真:ロイター/アフロ)

先月カリフォルニア州北部で、死者85人超という州史上最悪の山火事が発生しました。この山火事で焼失した家の跡地で、1ヶ月間飼い主を待ち続けた犬の話が感動を呼んでいます。

カリフォルニア州北部・パラダイスの惨状

11月8日カリフォルニア州北部の町パラダイス近郊で山火事が発生しました。「サンタアナ」と呼ばれる、山おろしの暖かい強風の影響で火は一気に勢いを増し、1分間で東京ドーム2個分という猛ペースで拡大しました。

9,000人を超える消防隊の決死の作業にもかかわらず、火は衰えるどころか日に日に拡がって、鎮火した25日までに62,000ヘクタールが焼失、85名以上が帰らぬ人となりました。結局この山火事はカリフォルニア州史上、最多の人的被害を出した山火事として記録されることとなりました。

特に被害が大きかったパラダイスは、もともと余生を過ごす楽園として高齢者が多く住む、のどかな街だったのですが、たった数日間で町のほぼ全域が壊滅的な被害を受けました。パラダイスどころか、ヘル(地獄)のようだと揶揄されたほどです。

マディソンの話

この悲惨な山火事のなか、主人を待ち続けたある犬のが話題になっています。

山火事が発生した日、ゲイロード夫妻は外出先からそのまま避難を余儀なくされました。そのため愛犬のミゲルとマディソンは家に置き去りになったのです。

2匹の安否を心配していた夫妻のもとに、その後ミゲルの消息がわかったと朗報が入ります。発見された場所は自宅から135キロも離れていたそうです。夫妻はボランティアのサリバンさんに救出を依頼、ミゲルは無事に保護されました。

さらにサリバンさんはマディソンを探すべく、避難命令が出て家に戻れないゲイロード夫妻にかわってパラダイスの家に向かいました。家は跡形もなく焼失していましたが、そこにマディソンの姿を見つけます。しかしマディソンはその場を離れたがらず、代わりに彼女は飼い主のにおいのついた衣服を与え、さらに定期的に食糧を届けました。

それから数週間経って避難命令が解除されたために、ゲイロード夫妻はミゲルと共に家に戻り、マディソンと再会を果たしました。マディソンはまるで自宅を守っていたかのようだったそうです。

メイソンの話

以前にも、災害でケガをしながらも、家族を待ち続けた犬がいました。

それは2011年アラバマ州を竜巻が襲ったときのこと。飼い犬のメイソンは、家とともに吹き飛ばされ、行方が分からなくなっていました。

ところが3週間後に家族が壊れた自宅に戻ってみると、そこに前足が2本折れ、半分くらいにやせ細ったメイソンを見つけます。おそらく吹き飛ばされた場所から、必死に這って自宅に帰ってきたのでしょう。

(↑元気になったメイソンの動画)

災害という惨状でも、飼い主を信じ、待ち続けた動物の姿に胸を打たれます。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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