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豪グレートバリアリーフにサイクロン上陸 珊瑚への影響

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
デビーの衛星画像。オーストラリア気象局

28日(火)世界最大のサンゴ礁地帯である豪・グレートバリアリーフに、サイクロン・デビーが上陸しました。

上陸時の勢力は、上から2番目に強いカテゴリー4で、台風で言うところの「非常に強い」勢力に匹敵しました。豪気象局によると、これほどの規模のサイクロンが上陸したのは2011年以来だったとのことです。

ハートの珊瑚礁で知られるハミルトン島では最大瞬間風速が73メートルに到達し、またクラークレンジでは12時間で580ミリという、とてつもない大雨を観測しました。

すでに低気圧に変わっているものの、今後もゆっくりとしたペースで進むため、相当な量の雨が降ることが予想されます。今回のサイクロンは、風もさることながら、大雨による洪水が非常に懸念されます。

今季のサイクロン事情

サイクロンとは、風速34メートル以上の熱帯擾乱を意味します。つまりアメリカのハリケーン、そしてアジアでいうところのタイフーンと同じです。南半球のサイクロンシーズンは、11月から4月までで、今季はオーストラリア近海でAlfred、Blanche、Calebそして今回のDebbieが誕生しています。

しかし実はこの時期にまだ4つというのは、非常に稀なことなのです。通常なら11個ほど発生している頃なのですが、今シーズンは異様に静かな状態です。

今年1月には、南半球全体でサイクロンがない期間が280日にも達し、史上最長記録を更新しています。さらにこの傾向は、今季だけの話ではなく、昨シーズンもまた静かで、オーストラリア近海にわずか1つしかサイクロンが発生しませんでした。(参考:weather underground)

年別のサイクロンの個数を表している。赤はカテゴリー3以上。オーストラリア気象局
年別のサイクロンの個数を表している。赤はカテゴリー3以上。オーストラリア気象局

研究者は、オーストラリア近海ではこうした"少サイクロン化"が、今後ますます進んでいくと考えているようです。その反対に、勢力はより強くなっていくと予測しています。

珊瑚への影響

さて、このような強大なサイクロンが珊瑚礁地帯を直撃すると、珊瑚へのダメージが心配されます。しかし一方で、悪いことだけではないようなのです。

上陸時のデビーの衛星写真。NASA
上陸時のデビーの衛星写真。NASA

このところグレートバリアリーフでは、珊瑚の白化が進み、去年には白化現象が過去最悪の規模になったと問題になりました。その一因は海水温の上昇です。

しかしOcean Watch Australiaによると、ハリケーンが近づくと、海の深いところの水がかきまぜるので海水温が下がり、白化現象を和らげる効果があると言います。さらに、ハリケーンの雲により直射日光が遮られ、これまた海水温を下げる効果があるようです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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