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カナダで史上最大規模の山火事 誘発した「オメガ・ブロック」

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
5月4日、カナダ・フォートマクマリーで発生した火災積雲(写真:ロイター/アフロ)

カナダ西部で、国家史上最大規模の山火事が発生し、非常事態宣言が出されています。山火事で空気が強く熱せられたために、「火災積雲」も発生しました。

山火事の被害

赤い場所は山火事の危険性が非常に高いところ。カナダ気象局。
赤い場所は山火事の危険性が非常に高いところ。カナダ気象局。

山火事が起きているのは、世界有数の「油砂(ゆさ)」の原産地として知られる、人口9万人ほどの、アルバータ州フォートマクマリー。消失面積は、850平方キロメートル(5日時点)で、およそ横浜市2個分に匹敵する広さとなっています。消失家屋数は1600に上り、この街の住民すべてに避難命令が出されています。

山火事による死者やけが人の報告はありません。

山火事の一因「オメガ・ブロック」か

カナダ西部では、今冬、例年になく暖冬で降水が少ない日が続きました。その傾向は今春も続いており、4月から日最高気温を塗り替える日が続出しています。特に、ここ5月に入ってからのアルバータ州での気温は真夏を思わせるほどのものとなり、山火事の危険性が指摘されてきました。

火災の起きているフォートマクマリーの最高気温は、3日32.6℃、4日31.7℃(この時期の平均16度)となりました。さらに風が強く、湿度の低い状態が続いていました。

その原因が、「オメガ・ブロック」と呼ばれる、偏西風の蛇行パターンです。偏西風はまっすぐ西から東に流れるのが普通ですが、北極方面からの寒気が南に降りると、そのとなりでは南から暖気が侵入することになり、「Ω」型の気流の流れになるのです。このパターンが見られると、同じような天候が数日間続き、凸の場所では暖気の影響で気温が高く、空気が乾燥します。

NWS BinghamtonのTwitterより
NWS BinghamtonのTwitterより

増える山火事消失面積

棒グラフは、過去10年間の火災の消失面を表している。カナダ気象局。
棒グラフは、過去10年間の火災の消失面を表している。カナダ気象局。

カナダ気象局によると、ここ10年で、山火事による消失面積が拡大しているといいます。さらに、山火事のシーズンも、最盛期の夏だけではなく、その前後にもずれ込むようになっているといいます。当局は近年の温暖化の影響もあると考えているようです。

*参考までに*

同州では先日「炎の竜巻」が発生しています

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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