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夏の甲子園に出場する珍しい名字の選手達・東日本編 最少は浅面、他に芦硲や洗平

森岡浩姓氏研究家
阪神甲子園球場(写真:アフロ)

6日から甲子園球場で高校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園が始まる。全国47都道府県から49の高校が参加することから、中には見たことのない珍しい名字の選手がいることも珍しくはない。そこで、今回出場する選手達の中から珍しい名字の選手をみてみよう。因みに、今夏から甲子園のベンチ入り人数は20人に拡大されている。

なお、選手名簿はAERA増刊号「甲子園2023」を使用、本記事では漢字の新旧字体は同じとみなした上で、読みによってランク付けしてある。

日本人の名字の総数は10万以上、筆者はランキング1万位以下が珍しい名字で、2万位以下になるとかなり珍しいと考えている。今夏の甲子園大会に出場登録されている49校980人の選手の中から、外国をルーツとするものを除いて2万位以下の名字の選手を中心に紹介したい。

まずは東日本編から。

浅面と芦硲

東日本のチームで最も珍しい名字は、仙台育英高の浅面(あさめん)選手。茨城県の出身だが、この名字は鹿児島市の名字で、移り住んだものだろう。

次いで星稜高の2年生芦硲(あしさこ)選手。西日本では谷間のことを「さこ」といい、様々な漢字をあてた。和歌山県では「硲」という漢字を使うこともあり、「芦硲」も和歌山県や大阪府に分布する。「芦硲」とはアシの茂っていた谷間がルーツだろう。因みに、芦硲選手はかつてU-12日本代表でもあった。

甲子園ではおなじみの洗平

八戸学院光星高の洗平比呂選手の名字も珍しい。「洗平」は青森県六戸町にあり、これで「あらいだい」と読む稀少かつ難読名字なのだが、高校野球に詳しい人だとおなじみの名字でもある。というのも、かつて光星学院高に洗平竜也という投手がいたからだ。

洗平竜也選手は1年夏にエースとなり3年連続して青森県大会決勝まで進みながら敗れ、しかもそのうち2回は延長戦で敗れている他、選抜大会にも1度も出場できず、悲運の投手として知られている。のちにプロの中日に入団したことから、プロ選手として覚えている人も多いだろう。

さらに昨年は同選手の長男で、比呂選手の兄歩人選手も同校のエースとして出場しており、高校球界に限っては有名な名字である。

その他の極めて珍しい名字

続いて、慶応高の延末(のぶすえ)選手、花巻東高の寿時(すとき)選手、共栄学園高の打野(うちの)選手、富山商の足谷(あしたに)選手、専大松戸高の上迫田(かみさこだ)選手、星稜高の専徒(せんと)選手、北海高の幌村(ほろむら)選手、愛工大名電高の田頭(たどう)選手あたりまでが極めて珍しい。

上迫田選手の「迫(さこ)」も西日本で谷間を指す言葉で、鹿児島県いちき串木野市以外ではほぼみられない名字である。

「幌村」は数少ない北海道をルーツとする名字で、新ひだか町を中心に日高地方に集中している。

「田頭」という名字は広島県を中心に西日本では珍しくはないが、その大半は「たがしら」である。東日本では岩手県に多く、こちらでは「でんどう」が中心。「たどう」は珍しい。因みに、田頭選手は愛知県の出身。

意外と多い小保内と喜屋武

少なそうにみえて意外とあるのが、北海高の小保内選手の名字。珍しい名字であるが、極めて珍しいというほどではない。

「小保内」のルーツは秋田県仙北市田沢湖の「生保内(おぼない)」で、現在は県境を越えた岩手県北部から青森県の八戸市付近に広がり、漢字も「小保内」と書くことが多い。

また、浦和学院高の喜屋武(きゃん)選手の名字も見たことがないという人も多いが、沖縄ではベスト50にも入るメジャーな名字である。明豊高にも沖縄出身の喜屋武選手がおり、今大会だけで2人出場している。

姓氏研究家

1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」「日本名門・名家大辞典」「47都道府県・名字百科」など多数。2017年から5年間NHK「日本人のおなまえ」にレギュラー出演。

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