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投げて打って「千両役者」の近江・山田 実は「満塁男」だった!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
投げて打って千両役者の近江・山田。2年連続の甲子園アーチで8強入りだ(筆者撮影)

 近江(滋賀)の最速149キロ右腕・山田陽翔(3年・主将=タイトル写真)が止まらない。1、2回戦は二ケタ奪三振でファンを魅了したが、海星(長崎)との3回戦では、投げるだけでなく、試合を決定づける満塁弾を放った。山田は秋、夏の滋賀大会でも満塁弾を記録していて、「満塁男」としても面目躍如。投げては7回を4安打1失点にまとめ、甲子園通算10勝目をマークした。

昨夏に続くアーチは試合を決める満塁弾

 試合は予想通り山田と海星の最速147キロ右腕・宮原明弥(3年)の投げ合いとなった。2-1と、近江1点のリードで7回の攻防が明暗を分ける。海星は2死1、2塁で代打の柿本彩人(3年=主将)がフルカウントまで粘ったが、山田のツーシームに空振り三振を喫し、同点機を逃した。その裏の近江は2死満塁と攻め、山田に打席が回る。100球を超えた宮原は球が浮き始めていて、2ボールから高めの142キロ直球を力いっぱい振り抜くと、大きな放物線を描いた山田の打球は、左中間最深部に飛び込んだ。山田にとっては、昨年の準々決勝の神戸国際大付(兵庫)戦以来の甲子園アーチ。投げて打って「千両役者」ぶりを遺憾なく発揮した山田の活躍で、近江は2年連続の8強入りを決めた。

秋、夏と滋賀大会でも満塁アーチ2本

 山田は、甲西との滋賀大会3回戦でも満塁アーチを放っていて、今夏の公式戦アーチはいずれもグランドスラムとなった。

山田は実は「満塁男」だった!昨秋の滋賀大会の立命館守山戦では、ヒジ痛明け最初のスタメンで満塁弾を放った。チームの窮地を救い、多賀監督も「山田の一発に泣きました」と大感激した。(筆者撮影)
山田は実は「満塁男」だった!昨秋の滋賀大会の立命館守山戦では、ヒジ痛明け最初のスタメンで満塁弾を放った。チームの窮地を救い、多賀監督も「山田の一発に泣きました」と大感激した。(筆者撮影)

 また、昨秋の近畿大会出場を懸けた立命館守山戦(3位決定戦)でも満塁弾があり、実は山田は正真正銘の「満塁男」だった。密かに狙っていた2年連続の甲子園アーチも達成したが、これまでの打席では力みが目立って、三ゴロやポップフライが多かった。これで準々決勝以降、打席でもリラックスしてバットが振れるだろう。

甲子園通算10勝に奪三振ではトップ10入り

 一方の投手・山田としてはどうだったか。この日の海星は右打者が多かったため、生命線のスライダーの制球に苦しんだ立ち上がりは不安定だった。失点した2回は、四球のあと盗塁、そして高めに浮いたスライダーを適時打された。しかしその後のピンチでは連続三振を奪うなど、7回で9三振と格の違いを見せた。7-1と差が開いて、8回から星野世那(3年)にマウンドを譲ったが、これで甲子園通算10勝目。奪った三振も通算で98個となり、トップ10入りした。

多賀監督誕生日に4強入りなるか

 18日の準々決勝は、今大会ナンバーワンスラッガーの浅野翔吾(3年=主将)を擁する高松商(香川)と対戦することになった。この日のようにスライダーが高めに浮くと痛打される危険性が高まるが、当日は多賀章仁監督の63歳の誕生日でもある。入学以来、常に意思を尊重し、能力を最大限に発揮させてくれた恩師に、2年連続の4強入りをプレゼントするつもりだ。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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