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大阪桐蔭 ついにストップ!  センバツ3連覇に試練

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪桐蔭がライバル・履正社に敗れた。センバツ3連覇へ、大きな試練だ(筆者撮影)

 大阪桐蔭がついに敗れた。公式戦では昨秋の神宮大会準決勝の創成館(長崎)戦以来の敗戦。大阪府下に限っては44連勝中だったが、やはり待ったをかけたのは、最大のライバル・履正社だった。

「プレッシャーはなかった」西谷監督

 敗戦後、西谷浩一監督(49)は、淡々と話し始めた。「チームが替わっているから、連勝がどうとかいうプレッシャーはない。まだまだ発展途上の状態だし、いい面も悪い面も出た。とはいえ、スタートから2か月がたっているし、負けたら悔しさがあるはず。もっと(練習を)やらないといけないことがわかっただろう。この負けをプラスに考えたい」と、現実を冷静に分析した。

序盤で履正社に大差つけられる

 前日の準決勝・大阪偕星学園戦で公式戦初完投した新井雅之(2年)がこの日も先発マウンドに立った。

履正社は、初回に先制打の小深田が3回にも2ランで5点をリード。小深田は夏も5番で桐蔭・根尾から2安打を放っている(筆者撮影)
履正社は、初回に先制打の小深田が3回にも2ランで5点をリード。小深田は夏も5番で桐蔭・根尾から2安打を放っている(筆者撮影)

しかし初回から、夏の雪辱に燃える履正社に攻められる。1死3塁から3番・小深田大地(1年)に適時打を許すと、さらにつながれ、6番・野口海音(2年=主将)に2点適時打を浴びて、あっという間の3失点。新井はさらに3回にも先頭打者を歩かせると、またも小深田にライトへ豪快な2ランを打たれ、序盤で5点を失ってKOされた。

攻撃はちぐはぐで

 打線は3回、ようやく履正社先発の右腕・植木佑斗(2年)から3連打で1点を奪い、1年生の中軸に回す。新チーム結成後、大当たりの西野力矢が死球で満塁と攻め、4番・船曳烈士が登場。しかしここは遊ゴロ併殺に終わり、植木を立ち直らせてしまった。

大阪桐蔭は中田が好投。「あれくらいは投げられる」と西谷監督も納得の4回2安打無失点投球だった(筆者撮影)
大阪桐蔭は中田が好投。「あれくらいは投げられる」と西谷監督も納得の4回2安打無失点投球だった(筆者撮影)

 その後はエースナンバーの中田惟斗(2年)が4回を2安打無失点に抑えるなど反撃を待ったが、6回に失策がらみでつかんだ好機も、焦った走者が三塁で憤死するなどちぐはぐな攻めに終始し、「投手を5人ぐらいつぎ込もうかと思っていた」という岡田龍生監督(57)もびっくりの植木の完投で、履正社が5-2で快勝した。

桐蔭の投手陣の課題が鮮明に

 安打数は履正社が「8」に対し、桐蔭が「6」で、残塁はともに「7」だったが、桐蔭の勝機はほとんどなかったと言っていい。3打点と活躍した履正社・小深田の勝負強さが光り、桐蔭の3、4番は西野が1安打だけと、下級生の中心打者が明暗を分けた格好だ。この両校は、夏も甲子園を争うことになるが、長い目で見れば、履正社はほかの投手を出さずに済んだのが生きてくる。一方、救援した2投手は好投したものの、序盤の劣勢を挽回できずに敗れた桐蔭は、課題が鮮明になった。「しばらくは投手をつないでいくことになりそう」と話す西谷監督の言葉通り、投手陣の柱が一向に決まらない。「誰がその日好調なのか」「この相手にはこの投手なら抑えられそう」など、西谷監督の投手起用が今後は大きなポイントになる。

近畿大会は2位で出場

 これで大阪桐蔭は大阪2位で近畿大会(20日~ ほっともっとフィールド神戸)に進むことになった。今年の近畿大会は大阪、兵庫、京都、和歌山から3校ずつ。滋賀、奈良から2校ずつの計16校で争われる。近畿のセンバツ一般選出枠は「6」だから、2勝して4強入りが目安となるが、今年も大阪勢が中心の大会になりそう。同府県勢が揃って勝ち進むと、最初に負けたチームが脱落する公算が大きい。1位校は他府県の1位とは初戦で当たらないが、2位の大阪桐蔭は、大阪勢以外のどのチームとも当たる可能性がある。今回は1位と下位校に力の差がある府県代表が多く、1位になった履正社はかなり有利と言える。

近江、智弁和歌山は特に避けたい

 他府県の1位でやりにくいのは、今夏の甲子園8強で、林優樹(2年)ー有馬諒(2年=主将)のバッテリーを始め、センターラインが健在の近江(滋賀)と、前チームも苦しめられた強打・智弁和歌山だろう。

大阪桐蔭にとって難敵になりそうな近江の林ー有馬のバッテリー。国体を経て滋賀大会準決勝、決勝と尻上がりで、初戦での対戦は是が非でも避けたい(筆者撮影)
大阪桐蔭にとって難敵になりそうな近江の林ー有馬のバッテリー。国体を経て滋賀大会準決勝、決勝と尻上がりで、初戦での対戦は是が非でも避けたい(筆者撮影)

 近江の林は、前チームの「4本の矢」でも主戦格だったが、新チームでは大黒柱に据えられる。滋賀大会の準決勝、決勝でも1失点完投勝ちし、調子が上がっている。下級生の右打者が中軸を打つ桐蔭にとっては、チェンジアップを交えて緩急を使われると攻略は容易でない。4番・黒川史陽(2年=主将)ら、看板の強打者の打棒に磨きがかかる智弁和歌山は、投手力の不安を得点力でカバーする。特に終盤での集中打は脅威だ。投手陣が際立つ兵庫勢では、1位の明石商の中森俊介(1年)の速球にはどのチームも手を焼きそうだ。3位の報徳学園は、甲子園でも好投した左腕の林直人(2年)と、速球に力がある本格派・坂口翔颯(かすが=1年)の二枚看板で、試合運びがうまい。伝統の強打でライバル・智弁学園を圧倒した天理(奈良1位)の爆発力や、3位ながらチームが急成長している龍谷大平安(京都)なども、桐蔭からすれば初戦での対戦は避けたい。組み合わせ抽選は16日にある。

ここからが力の見せどころ

 準決勝に続いてベンチスタートとなった中野波来(2年=主将)は、「ベンチで見ていて、『打たなあかん、守らなあかん』と自分たちで圧をかけていた。近畿大会では、気持ちの面でしっかりと攻めていきたい」と厳しい表情で振り返った。西谷監督は、保護者を前に、「ここからが全員の力の見せどころ。大きな(センバツの)優勝旗があり、それを皆で返しに行く目標があります」と挨拶した。その目標達成には、この先、さらなる試練が待ち受ける。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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