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その占いや性格診断アプリ、使っても大丈夫ですか?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
診断アプリ 占い(写真:アフロ)

8月18日から「日本語ボキャブラリーテスト」という語彙力テストがTwitterで流行中。50の四択問題に答えると診断結果が表示されるもので、大勢が結果をシェアしていました。しかしそのなかには、「ln.is」なるスパムに感染している人がたくさんいると、指摘する声があがっています。

出典:「ln.is」で始まるリンクにご用心 2013年のスパムが「語彙力テスト」きっかけで再び拡散中【ねとらぼ】

先に「それでもスマホで占いをしますか!?」という記事を書きました。占いだけではないのです! 性格診断や心理検査のようなものも含まれ、いわゆる診断アプリにも同様の問題があるのです。

診断アプリとは、たとえば、以前に流行った「脳内メーカー」のように、名前等を入力して、その人のあたまの中がどのようになっているか、複数の漢字で表すようなものです。頭の横断面が漢字で敷き詰められているというイメージ図が流行しました。もちろん、何の信頼性もないジョーク(冗談)ツールです。最近では、利用する人を四文字熟語で表す「あなたのイメージを四文字熟語で表現したー」や「職務質問」といったたわいもないものがほとんどです。

そのような診断アプリでは、例えば名前を入力したり、簡単な質問に答えたりして、その回答を元に結果を表示します。しかし、中には名前だけでなく、かなりプライバシーに関わる質問を行ったり、生年月日や出生地すら入力させるものも存在します。フェイスブックやツイッターを利用した診断アプリでは、過去の投稿や友人関係ですら利用することを要求するものもあります。さらにスマホのアプリなどでは、様々な権限を要求し、場合によっては住所録や友人の電話番号すら取られてしまうこともあるのです。もちろん、その情報が悪用されることなく、その場だけで使用され、確実に消去されているのであれば問題はありません。しかし、そのような情報は保存され、公にされることなく、二次利用されることも多いのです。

知らないうちに、あるいは自分が気付かないだけだとしても、スマホ等のアプリで、プライバシーに関わる様々な権限が奪い取られることは問題外としても、名前まで入力して、いくつかの質問に答えるだけでも悪用されれば、その利用者にとって被害が及ばないとも限りません。大概の人は「名前しか書いていないから大丈夫」、あるいは「大した質問に答えていないから安心」と云うでしょう。しかし、安易に診断アプリを利用する人は、そのような類のアプリやサービスをいくつも利用することが常であり、それらのデータを合わせれば、いわゆる「名寄せ」等を行えば、大きな意味のあるデータに成長させることができ、場合によっては個人が特定されてしまうこともあり得るのです。

名前や生年月日、あるいは質問に答えるようなアプリは無条件に利用するのではなく、いったん立ち止まって、安全か否か考えるべきであり、考えがまとまらない場合は、そのアプリを利用する必要があるのか否かを考えて、むやみに利用しないことです。

個人情報を含めて、意識しない間に、秘密にしなければならない情報を自ら送ってしまうことがあるということを自覚し、その予防に十分配慮しなければなりません。

出典:第57回 無意識に秘密を漏らしていませんか?【Yahooニュース!個人】

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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