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カジノや宝くじ、そして音楽、海外サイトだから合法だなんて!?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
音楽ダウンロード(写真:アフロ)

インターネット上のオンラインカジノで賭博をしたとして、京都府警は10日、埼玉県内に住む60歳代の無職の男ら3人について、単純賭博容疑で自宅の捜索を始めた。捜査関係者への取材でわかった。逮捕状を請求し、同日中に逮捕する。利用されたサイトは英国に拠点があるが、日本人がディーラーを務め、日本人が参加しやすい仕組みだった。無店舗型のオンラインカジノの客が、同容疑で摘発されるのは全国初とみられる。

出典:ネットカジノ客逮捕へ、国内で海外サイトに参加【読売新聞】

「これ、海外で運営しているサイトだから合法です!」と言われたことは有りませんか? そう言い訳をされるときに限って、ほとんどの場合、合法ではありません。たとえば、「このサイトに行けば、キスマイやいきものがかり、それにflumpoolの最新の曲がタダでダウンロードできる」と聞かされて「海外サイトを使っているから合法」と言われても信じてはいけません。これは立派な違法行為なのです。

2009年以前は、ネット上に保存されている楽曲等を著作権社の許可なしにダウンロードしたとしても、それを取りしまう法律がありませんでした。しかし現在では、その楽曲がネット上のどこにあろうが、つまり海外サイトだろうが何だろうが、著作権者の許可なしにダウンロードしただけで処罰の対象になります。

現在、「海外サイトだから」という言い訳はほとんど通じなくなりました。クラウドの時代になり、さらにそのデータが物理的にどこにあるかということは問題視されなくなりつつあり、逆に、そのデータを利用する主体に注目が移ったと言えます。著作物だけでなく、違法な「もの」を扱うサイト、正確にはその売買や提供の仲介を行うサイトでは、それが物理的に海外にあったとしても、それを運用する主体が日本に所属する場合は法律によって裁くことができるようになったのです。そしてそのサイトを利用したものも原則として罰せられることになりました。楽曲や映像作品といった著作物をネット上で見つけたからといって、それをダウンロードしただけでも罪に問われる可能性も出てきたのです。

今回、冒頭の新聞引用記事にあるように、海外のカジノサイトを利用したことで、逮捕されることになりました。日本人がディーラーを務めているから、あるいは日本語での説明があるから逮捕されたわけではありません。国内において賭博行為を行ったこと自体に対して罪が問われているのです。「海外にサーバがあるから賭博を行っても違法ではない、海外旅行をしてカジノを利用しているのと同じ!」という人が現実にいたわけですが、海外サイトであろうがなかろうが、利用する主体である人が国内にいれば罪が問われることになったのです。

今でも「海外サイトだから合法」と明らかに欺いて不法な利益を得ようとしているサイトも存在します。さらに今後注意すべきことは、海外サイトのサービスが日本国内では法に抵触する可能性があることです。たとえば、宝くじ。日本国内でも宝くじは合法であり、高額な当選金額の宝くじも登場し、テレビや雑誌のコマーシャルでも頻繁に目にします。だからといって、日本国内から海外の宝くじを購入することは違法なのです。特に海外サイト経由で、さも当然のように販売されている場合があります。ネットを利用することによって、何事につけても便利な時代は、知らず知らずの間に身を危険にさらしている時代でもあるのです。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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